Wolfspeedは世界最大規模のパワーエレクトロニクス展示会「PCIM Expo & Conference 2026」において、同社の第5世代炭化ケイ素(SiC)MOSFETを紹介した。1200V品で業界最低クラスという特性オン抵抗を実現したほか、高温時の安定したスイッチング特性や逆回復特性を強化している。
Wolfspeedは世界最大規模のパワーエレクトロニクス展示会「PCIM Expo & Conference 2026」(2026年6月9〜11日/ドイツ・ニュルンベルク)において、同社の第5世代炭化ケイ素(SiC)MOSFETを紹介した。1200V品で業界最低クラスという比オン抵抗(特性オン抵抗、RSP)を実現したほか、高温時の安定したスイッチング特性や逆回復特性を強化している。
WolfspeedはPCIMの初日である2026年6月9日に第5世代SiC MOSFETを発表した。同社パワーデバイス&パケージ開発担当ヴァイスプレジデントのAdam Barkley氏は発表に際し「当社のプレーナーMOSFET技術にはまだ革新の余地がある。顧客が使い慣れたプロセスや設計資産を活用できる低リスクなアップグレードパスとして第5世代品を開発した」とコメントしている。
第5世代品は5×5mmのダイサイズを採用し、MOSFETのアクティブダイ面積に対する効率性を示す指標であるRSPにおいて「新たなベンチマークを確立した」製品と強調。電気自動車(EV)向けトラクションインバーターや急速充電器、産業用電源などにおいて、小型化や高効率化につながるとしている。
750V品と1200V品を展開し、1200V品は175℃時のチップレベルRSPが3.4mΩ-cm2、750V品は同2.0mΩ-cm2を達成。Wolfspeedによると、特に1200V品は現在市場で入手可能な競合製品と比べ最大27%の改善を実現しているという。
また、連続動作時の最大接合温度を従来の185℃から200℃(寿命制限付きで215℃)へ引き上げた。オン抵抗の分布も±18%に抑え、設計マージン削減にも貢献するとしている。
1200V品では同サイズで第4世代比約33%の電流容量向上を実現した。より少ないSiC面積で同じ電流を扱えるため、モジュールの小型化や高出力化につながるという。
PCIMのブースでは第5世代品について、競合トレンチ型SiC MOSFETの比較などを示しながらその特徴や優位性を強調。比較では、ターンオン時および逆回復時の波形を示しつつ、競合トレンチ品とほぼ同じ電流変化率(di/dt)条件で比較した場合でも安定したスイッチング特性を示すとともに、逆回復時のピーク電流や電圧ピークも低減できると説明していた。
実際に1200V品の逆回復特性比較を見ると、競合トレンチ品で大きな電流スパイクが発生しているのに対し、第5世代品ではその振幅が小さく抑えられている。逆回復時の電圧ピークも低減していて、同社はソフトボディーダイオードの効果によるものだとしている。説明担当者は「競合トレンチ品では逆回復に伴う大きな電流スパイクや電圧ピークが発生する一方、第5世代品は滑らかで安定した波形を維持する。ピーク電圧が低いということは、さらに高速なスイッチング条件を選択できる余地があり、スイッチング損失の低減にもつながる」と強調していた。

左=1200V品のターンオン波形比較。同等のdi/dt条件でも競合トレンチ品に比べ電流オシレーションを抑制している/右=1200V品の逆回復特性比較。第5世代品は競合トレンチ品に比べピーク電流と過電圧を低減している[クリックで拡大]ブースでは温度変化による逆回復特性の比較データも示していた。750V品の評価では、25℃、150℃、175℃の各条件で取得した逆回復波形がほぼ重なり、高温時でも特性変動が極めて小さいことを示した。
一方、比較対象のトレンチ品では温度の上昇に伴ってピーク電流が増加し、波形の変動も大きくなっていた。説明担当者は「第5世代品は温度が変わっても逆回復波形がほぼ変化していない、これはボディーダイオード特性が非常に安定していることを示している。一方、競合トレンチ品では温度が上昇するにつれてピーク電流が大きくなる。そのため設計時には高温時の条件を考慮する必要がある」などと強調していた。
SiC MOSFET市場では近年、低オン抵抗化を狙いトレンチ型の市場展開が進んできた。一方でWolfspeedは、継続してプレーナー構造を磨き込み、性能向上と高温安定性、信頼性を両立した形だ。説明担当者は「われわれはプレーナー型でトレンチ型に匹敵する性能を実現できている。その上でプレーナー型はよりシンプルで、信頼性が高く、製造コスト面でも有利だ」などと説明していた。
第5世代品は同社の200mm SiC量産ラインで製造される2世代目のMOSFET技術でもある。新たな製造装置の導入を必要とせず、既存の量産基盤を活用できることから、同社は「顧客にとって低リスクなアップグレードパスになる」などとしている。
なお、1200V品「QEM50120-025D10」と750V品「QEM50075-025D10」は現在、一部顧客向けにサンプル提供を開始している。市場需要および顧客要件が固まり次第、750V〜1200V帯新製品を2026年を通じて、さらに2027年初頭にかけても継続的に投入していく予定だ。
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