産業技術総合研究所(産総研)は、電圧駆動型MRAMの大容量化を可能にする新たな磁気情報書き込み技術を開発し、その動作を実験によって確認した。「電圧誘起スタティック磁化反転法」と呼ぶ書き込み方式によって、幅広いパルス幅の条件で、安定した磁気情報の書き込みができるという。
産業技術総合研究所(産総研)は2026年4月、電圧駆動型MRAMの大容量化を可能にする新たな磁気情報書き込み技術を開発し、その動作を実験によって確認したと発表した。「電圧誘起スタティック磁化反転法」と呼ぶ書き込み方式によって、幅広いパルス幅の条件で、安定した磁気情報の書き込みができるという。
現行のMRAMは、情報の書き込みに電流を用いる方式だ。この方式は情報を安定に制御するため大きな電流が必要となり、電力消費の増加が課題となっていた。一方、電圧で情報を書き込む電圧駆動型MRAMは、低消費電力で書き込めるものの、電圧磁気異方性制御(VCMA)効果を活用した「電圧誘起ダイナミック磁化反転法」だと、書き込み電圧のパルス幅が変化すると書き込みエラーが生じることもあった。
研究グループは今回、非磁性体薄膜を2層の強磁性体薄膜で挟んだ「人工反強磁性体」を用い、強磁性体薄膜の磁気異方性を電圧によって制御する技術を開発した。開発した「電圧誘起スタティック磁化反転法」では、界面制御で膜面垂直方向に自発磁化を形成した磁性体薄膜に電圧を加え、その垂直磁化を反転させることで磁気情報を書き込む。
これまで強磁性体層(記憶層)には、厚みが1nm程度の単層強磁性体が用いられてきた。今回はこの代わりに「人工反強磁性体」を採用した。結合エネルギーが負の値を示すと、2つの磁化方向が反平行となり、人工反強磁性体が形成される。絶縁体層を介してこの人工反強磁性体に電圧を加えると、磁性層間結合の大きさが変わり、固定磁界中において磁化配置を制御できることが分かった。
さらに、書き込み電圧の符号によって、書き込み電圧がゼロの状態で2種類の値をとることを確認した。これによって、書き込み電圧として片側の符号しか使えなかった従来方式のように、磁化状態を事前に確認する必要がないという。
実験では、数十ナノ秒という長いパルス幅を用いて書き込みを評価した。電圧パルス幅を75ナノ秒に設定し、正電圧パルスと負電圧パルスを交互に加えて強磁性体薄膜における磁化変化量を調べた。この結果、電圧パルスにより、高い再現性で磁化を制御できた。
さらに、電圧パルス幅を変えて磁化変化量を測定した。この結果、サイズが10μmという素子でも、50ナノ秒という高速書き込みができることを確認した。電圧パルスが50ナノ秒より長い場合も、安定して磁化を制御できることが分かった。素子を100nm以下に微細化すれば、電圧パルスが1ナノ秒程度でも書き込みが可能だという。強磁性体層における「磁気摩擦(磁気緩和)」が大きい材料ほど、より高速な書き込みができることも判明した。
今回の研究成果は、産総研ハイブリッド機能集積研究部門の中山裕康主任研究員、野崎隆行研究グループ付、山路俊樹主任研究員、野崎友大研究グループ長、今村裕志研究グループ付、エレクトロニクス・製造領域の湯浅新治上級首席研究員らによるものである。
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