東京理科大学の研究グループは、ナトリウムイオン電池の正極材料について、電池の長寿命化につながるメカニズムを解明した。研究成果は他の層状酸化物正極にも応用できることから、ナトリウムイオン電池技術全体の発展に寄与するとみられる。
東京理科大学の研究グループは2026年8月、ナトリウムイオン電池の正極材料について、電池の長寿命化につながるメカニズムを解明したと発表した。研究成果は他の層状酸化物正極にも応用できることから、ナトリウムイオン電池技術全体の発展に寄与するとみられる。
ナトリウムイオン電池の正極材料の中でも、O3型NaNi1/2Mn1/2O2は高い可逆容量を示す。このため、高いエネルギー密度が期待されている。ところが、充放電を繰り返す過程で結晶構造が変化し、容量や電圧が低下するという課題があった。特に高電圧領域ではO’3相が形成され、反応の可逆性や構造安定性を損なう要因の1つといわれてきた。
研究グループは今回、スカンジウム(Sc)による「結晶内部置換」と「表面修飾」を個別に設計した材料を用い、それぞれが電池の長寿命化や高電圧化などにどのような影響を及ぼしているか調べた。
この結果、結晶内部置換は充放電に伴う結晶構造の変化を抑え、正極材料における結晶構造の安定性を向上させていることが分かった。O3型NaNi1/2Mn1/2O2では、充電中にNaが脱離して結晶構造が大きく膨張収縮する。このため、長期サイクル特性が悪化していた。今回はScを結晶内部に置換したことで、膨張収縮を抑えることができたという。
一方で表面修飾は、電極と電解液の界面で生じる副反応を抑え、長期サイクル時の劣化を低減できることが分かった。結晶内部置換が材料内部の構造を安定化させるのに対し、表面修飾は界面反応の安定化に寄与している。どちらのコイン型フルセルも、300サイクル後における容量は、Scドープ試料で71.4%、Sc表面修飾試料は91.2%を維持していた。
さらに東京科学大学と連携し第一原理DFT計算と実験結果を組み合わせ、これらのメカニズムを解析した。この結果、Scの結晶内部置換は、充放電過程におけるO’3相への相転移を抑え、より高い電位での可逆反応を維持させることが明らかになった。しかも、Scドープ試料では放電プラトー電圧が約0.1V上昇した。Sc置換が反応経路を制御することによって、平均作動電圧を向上させられることも分かった。
今後は、ドーピングとコーティングをそれぞれ最適化するとともに、これらを併用した時の相乗効果を検証していく予定。
今回の研究成果は、東京理科大学大学院理学研究科化学専攻の守谷洸大氏(2024年度修士課程修了)、同大学理学研究科化学専攻の鳥海翔氏(2026年度博士課程1年)、同大学理学部第一部応用化学科の熊倉真一准教授、駒場慎一教授らによるものである。
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