東京理科大学の研究グループは、光ファイバー内の希土類原子を1つだけ選択的に励起し、単一光子を生成することに成功した。光を用いた量子通信ネットワークにおいて高効率の伝送が可能となる。
東京理科大学の研究グループは2025年10月、光ファイバー内の希土類原子を1つだけ選択的に励起し、単一光子を生成することに成功したと発表した。光を用いた量子通信ネットワークにおいて高効率の伝送が可能となる。
通信システムにおいて、情報の安全性を確保する方法として、量子暗号通信技術が注目されている。光を用いた量子通信を実現するするには、単一光子光源の開発と、生成した単一光子を遠隔地に伝送する仕組みを構築する必要があるという。
研究グループはこれまで、光ファイバー内部に添加された希土類原子を用い、室温環境で単一光子を生成する手法を提案してきた。光ファイバーの側面から単一光子を集光するために、従来は対物レンズを用いてきたが、この方式だと生成した単一光子をいったん光ファイバーの外部に取り出すため、伝送効率は良くなかった。また、単一光子の集光効率が対物レンズの性能に左右されるという課題もあった。
そこで今回は、光ファイバーの側面から励起光を入射。そして、ファイバー内の希土類原子を1つだけ選択的に励起し、光ファイバーを通して単一光子を集光する手法を考案した。これにより、光子を光ファイバーの外部に取り出すことなく、効率よく伝送することが可能となった。
今回の実験では、希土類元素としてネオジウム(Nd3+)を用いた。Nd3+は近赤外から光ファイバー通信波長帯まで、幅広い発光波長をもつ。このため、1つの元素で目的に応じた発光波長を選択できるという。
作製したデバイス内の単一Nd3+に光ファイバー側面から励起光を入射。Nd3+から放出された光子を同じ光ファイバーで集光して光子相関を測定した。この結果、単一光子が生成されていることを確認した。しかも、従来手法に比べ高い効率で光子を集光できることも実証した。
今回の研究成果は、東京理科大学大学院理学研究科物理学専攻の清水魁人氏(2025年度博士課程3年)、同大学理学部第一部物理学科の長田朋助教、佐中薫准教授らによるものだ。
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