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ペロブスカイト太陽電池の低コスト化に、名大らが新材料CBBCを出発原料に3工程で合成

名古屋大学の研究グループは、京都大学や東京都立大学と共同で、ペロブスカイト太陽電池の電子輸送層として機能する新材料を開発した。この電子輸送材料は「キラルX形」という特異な非平面形状を有していて、フラーレン系材料に匹敵する性能が得られた。

» 2026年09月02日 09時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

簡便に合成が可能で、フラーレン系材料に匹敵する性能を実現

 名古屋大学大学院工学研究科の福井識人准教授らによる研究グループは2026年8月、京都大学や東京都立大学と共同で、ペロブスカイト太陽電池の電子輸送層として機能する新材料を開発したと発表した。この電子輸送材料は「キラルX形」という特異な非平面形状を有していて、フラーレン系材料に匹敵する性能が得られた。

 電子輸送材料は、さまざまな有機電子デバイスの基本的な構成要素だ。現在は特異な球状構造を有し高い移動度を示すフラーレンおよびその誘導体が主流となっている。ただ、材料コストが高いことや分子の設計性が限られていることなどが課題となっていた。非フラーレン系電子受容体の開発も進められているが、その多くは平面形の構造であった。

 研究グループは近年、市販のπ共役分子であるジベンゾクリセンの骨格内部の結合を酸化的に開裂することで、8の字型にねじれたπ共役分子(CBBC)を簡便かつ高エナンチオ選択的に合成できることを明らかにしてきた。CBBCは電子受容性に優れ、非平面構造のため、固体中で等方的な電子輸送経路を構築するのに適しているという。

電子輸送材料の構造と特長[クリックで拡大] 出所:名古屋大学他
結合開裂法による8の字型分子CBBCの簡便合成[クリックで拡大] 出所:名古屋大学他

 研究グループは今回、CBBCの骨格周辺部位に電子受容性の官能基を導入した「化合物1」を合成した。この化合物はCBBCを出発原料に3工程で実現した。化合物1は「キラルX形」という特異な分子形状を有している。この骨格において、2つの電子受容性に優れた直線状の部分構造(化合物2の相当)は、ねじれながら立体交差するように配列されている。

 化合物1は電子受容性に優れ、真空準位に対して約-4.6eVにLUMO準位を示した。しかも、加熱したテトラクロロエタンに可溶で、溶液をスピンコートすれば薄膜を作製できるという。この薄膜は参照分子2と比べ、電子移動度は約2倍も高いことが分かった。

 この材料を用いて作製したペロブスカイト太陽電池素子は、光電変換効率が20.6%となった。フラーレン誘導体(PCBM)を用いた場合の効率21.2%に匹敵する値だ。また、化合物1の片方の光学異性体のみの薄膜は、キラル誘起スピン選択性を示した。スピン選択率は約80%だった。

開発した新規電子輸送材料の合成、構造および、素子特性[クリックで拡大] 出所:名古屋大学他

 今回の研究成果は、名古屋大学の福井准教授の他、京都大学化学研究所の若宮淳志教授、中村智也准教授、梶弘典教授、京都大学大学院工学研究科の浦谷浩輝教授、東京都立大学大学院都市環境科学研究科の石割文崇准教授らによるものだ。

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