量子コンピュータと従来のコンピュータ(古典コンピュータ)の最も大きな違いは情報の単位だろう。古典コンピュータの情報単位は通常、「ビット(bit)」と呼ばれており、「1」あるいは「0」の状態をとる。量子コンピュータの情報単位は通常、「qubit」(キュービット、量子ビット)」と呼ばれる。
量子ビットは「1」あるいは「0」、あるいは「1と0が重ね合わさった状態」のどれかをとる。「1と0が重ね合わさった状態(重ね合わせの状態)」は、直観的には非常に分かりにくい。「重ね合わせの状態」は、「1」か「0」の確率だと考えると理解しやすくなるだろう。例えば「1」の確率が20%で「0」の確率が80%の量子ビットが存在するし、そのような量子ビットを作成できる。
量子ビットを実現する物理方式はいくつか存在する。超伝導(超電導)方式、イオントラップ方式、半導体(シリコン量子ドット)方式、冷却原子(中性原子)方式、光量子方式などがある。
量子ビットを実現する物理方式とその特性。名称の下にある赤字はコヒーレンス時間(量子ビットの状態を維持可能な時間)、グラフの縦軸は量子ゲート忠実度(量子ゲートによる操作が正確に実行されている割合)、グラフの横軸は量子ゲートの動作周波数[クリックで拡大] 出所:JEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会超伝導(超電導)方式は、極めて薄い絶縁膜を2枚の超伝導薄膜で挟んだ素子(ジョセフソン素子)を含む超伝導回路とマイクロ波パルス照射によって量子ビット(qubit)を構成する。なお超伝導状態の実現には、極低温環境を必要とする。
イオントラップ方式は、真空中のイオンを電磁場によって捕捉し、その内部状態(主に電子の準位)を量子ビットとして利用する。量子ビットの制御にはレーザー光やマイクロ波などを使う。なお極低温環境を必要とする。
半導体(シリコン量子ドット)方式は、シリコンをはじめとする半導体中の電子スピンや核スピンなどを量子ビットとして利用する。この方式も極低温環境を必要とする。シリコンCMOS製造技術との相性が良いことから、将来が期待されている。
冷却原子(中性原子)方式は、レーザー冷却や蒸発冷却によって原子(あるいは中性原子)を光格子や光トラップなどに配置して量子ビットとして利用する。この方式も極低温環境を必要とする。
光量子方式は、光子(フォトン)を量子ビットとして利用し、偏光や位相などの光に特有の属性を符号化して量子情報とする。この方式は、常温・常圧環境で量子コンピューティングを構築できる。
(後編に続く)
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