ロームは2026年5月にサーバマーケティング組織を立ち上げるなど、AIサーバ市場への取り組みを強めている。サーバ向け事業では当初、2030年度の売上高目標を300億円としていたが、需要の急拡大を受け、この目標を1000億円以上に上方修正している。AIサーバ向け需要は既にロームの事業にも大きな影響を与えている。一部製品では生産能力が逼迫するほど需要が伸びているといい、電気自動車(EV)向け需要の減速を補う存在になっているという。
事業拡大の足掛かりの1つが、AIサーバ用電源で高いシェアを持つ台湾のDelta Electronics(デルタ電子)との取り組みだ。両社はGaNパワーデバイスの開発/量産に関する戦略的パートナーシップを締結し、電源システム分野で連携を深めてきた。現在はAIサーバ用電源でも協力していて、ロームは同市場で高いシェアを持つデルタ電子からの要求を製品開発に反映。そこで培った技術や製品を他の顧客にも展開する戦略だ。担当者は同社を「ティーチャーカンパニー」と表現し、「あとはそれをどれだけ展開できるか」と語っていた。
特にAIサーバの成長が追い風となっているのがGaNだ。ロームはGaNの有力用途としてEVのOBC(オンボードチャージャー)を見込んできたが、EV市場の減速によってその需要の立ち上がりについて「遅れなどがある」(説明担当者)とする一方、AIサーバ向けの伸びには「非常に期待している」とする。
PCIM Europe 2026では、GaN HEMTのディスクリート製品だけでなく、ドライバーIC、GaNとドライバーを組み合わせたパワーステージ、さらにGaNとコントローラーを統合した製品まで紹介。パワーデバイス単体ではなく、制御ICまで含めて提案することでGaNの採用拡大を狙う。
もちろん、従来市場である民生機器向けの開発も継続している。会場では650V GaN SiPを採用した65W疑似共振(QR)フライバック電源の評価ボードを展示。既存品は64×24×17mmで電力密度が2.5W/cm3なのに対し、開発品は42.5×22.8×16mmまで小型化し、電力密度を4.2W/cm3に高めた。
小型化の鍵はGaNによる高周波化だ。GaNの採用によってスイッチング周波数を従来の120kHzから480kHzに高め、これによってコンデンサーの数を削減した。ただし、GaNを採用して周波数を高めるだけでは小型化できない。トランスについても高周波動作に適したコア材を協業先と開発するなど、周辺部品を含めて最適化した。担当者は「GaNだけでなく、全体を最適化しなければこのサイズは実現しなかった」と説明。単なるGaNへの置き換えではなく、制御IC、受動部品まで含めて電源システム全体を最適化した成果だとした。
GaNの需要拡大を見据え、生産体制の強化も進める。ロームはTSMCのGaNファウンドリー事業撤退決定を受け、これまで委託してきた650V GaNの内製化を進めている。具体的には浜松工場で8インチGaNラインでの量産体制を構築している。TSMCからGaNプロセス技術のライセンス供与を受け、2027年の8インチGaNデバイスの生産開始を目指す。AIサーバをはじめとするGaN需要の拡大に備え、デバイス開発と生産の両面で事業基盤を強化する計画だ。
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