東北大とアイシンは、AI処理に必要なデータとOSのブートデータをチップ内のSTT-MRAMに格納できる「AI SoC」を開発した。自動車やロボット、産業機器などに向けたエッジAIシステムにおいて、高速起動と低消費電力化を両立させることができる。
東北大学国際集積エレクトロニクス研究開発センター(CIES)の遠藤哲郎教授を中心とする研究チームとアイシンは2026年11月、AI処理に必要なデータとOSのブートデータをチップ内のSTT-MRAMに格納できる「AI SoC」を開発したと発表した。自動車やロボット、産業機器などに向けたエッジAIシステムにおいて、高速起動と低消費電力化を両立させることができる。
エッジAIシステムは、AI処理を高速に実行する必要がある。ところが、AIモデルの大容量化によって、プロセッサと外部メモリ間で大量のデータ転送が求められ、現行のAI SoCだと信号の遅延や消費電力の増大が課題となっていた。
新たに開発したAI SoCは、TSMCの16nm FinFETプロセスを用い、CPU「デュアルコアArm Cortex-A53」、GPU「Arm Mali-G31」、AIアクセラレーター「Tiny YOLOv3」および、不揮発性メモリ「STT-MRAM」などをワンチップに集積した。
AI SoCの大きな特長は、32MバイトのSTT-MRAMをオンチップ化したことである。STT-MRAMにはAIモデルの重みデータだけでなく、OSのブートデータも格納できる。このため、電源投入時に外部のSSDやDRAMから大量のデータを転送する必要がない。この結果、電源投入からOS起動までの時間が65.7ミリ秒となった。従来方式に比べ38.59倍も速いという。
AI SoCには、8ビットと16ビットを組み合わせたハイブリッド乗算アーキテクチャや重み共有技術を開発し採用した。16ビットの精度を維持しながら、AIモデルの重みデータ量は9.36Mバイトにした。このデータ量は従来に比べ53%の削減となる。物体検出精度を示すmAPは0.325から0.316への低下にとどめた。さらに、4×4のタイル内で同じカーネルの重みを複数のクロックサイクルで再利用する重み共有技術を用いることで、データ移動量とローカル帯域幅を削減した。
これらの技術によって、内蔵したSTT-MRAMから必要な重みを直接読み出して処理することができる。この結果、AI処理時間はこれまでの594.6ミリ秒から58.5ミリ秒に短縮された。約10倍も高速化したことになる。限られたメモリ容量の中でもTiny YOLOv3による物体検出が可能となる。システムレベルの実証によると、Tiny YOLOv3による1フレームの推論エネルギーは50.7mJであった。この値は従来に比べ50分の1となる。
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