インドは2050年までに最大200GWの太陽光発電を整備する計画を2008年に初めて発表した。その第一歩として、2020年までに20GWの発電能力の実現を目指す。インド国内の2〜3カ所に太陽電池の製造工場も建設する予定だ。
インド政府は、太陽電池市場と同市場を支える太陽光発電業界の双方の発展に向けた長期計画に積極的に取り組むとして、その詳細を明らかにした。インドは、太陽光発電に国家規模で取り組んでいる。しかし、過去数年間にわたり年率40%もの成長を遂げてきた太陽電池市場が2009年に急激に落ち込むとの予測を受け、こうした計画に乗り出した。
インドは気候変動に対する国家規模の取り組みの一環として、2050年までに最大200GWの太陽光発電を整備する計画を2008年に初めて発表した。その第一歩として、2020年までに20GWの発電能力の実現を目指すという。
同計画の第1段階として、2012年までにインド政府は公共施設へ100MWの太陽電池を導入する。さらに、実用規模の太陽光発電プロジェクトを公共事業として推進し、地方に太陽電池の製造施設を整備する計画だ。英国の投資銀行であるBarclays Capitalの調査報告によれば、同計画の実施によって、2008年当時はゼロに等しい状況であったインドの太陽光発電能力は2012年に1GWに拡大する見通しだという。
2020年時点の太陽光発電の想定比率は以下の通り。
インド政府が同計画に投入する金額は今後30年間で約200億米ドルに上ると、英Barclays Capitalは予測する。今後5年間では約10億米ドルが投入されるとみられる。
同計画の一環として、インドには2〜3カ所の太陽電池の製造工場が建設される予定だという。同工場には多結晶Si(シリコン)の製造工場を併設し、年間で最大2GWの太陽電池の製造を目指す。
Barclays CapitalのアナリストであるVishal Shah氏は、調査報告書の中で次のようにコメントしている。「現在のインドの1人当たりGDPに対する太陽光発電の資本コストを考えると、インドは商業/産業分野において魅力的な市場だといえるだろう。インドは現時点では太陽電池の主要な市場ではないが、今回、新計画が発表されたことで、大規模な公共事業プロジェクトに対する投資も期待できる」。
同計画から利益を受ける企業の中には、米GT Solarや米First Solar、中国JA Solar Holdings、英BP Solarなど、既にインドとの関係を築いている企業もあるという。Shah氏は、「今後2〜3カ月の間に太陽光発電に関するより詳細な計画が発表され、2010年から着手される見込みだ」と予測する。
インドの太陽光発電計画に関するニュースは、Barclays Capitalが米国の太陽電池企業の業績が上向きになるという予測を発表したのとほぼ同時期に報じられた。同計画によって公共事業に関する新規契約が見込まれる他、米エネルギー省が太陽光発電に対する助成金政策を新たに打ち出すとみられることなどから、米国の太陽電池企業は収益を増やすことができるだろう。
一方、中国の太陽電池企業の株価も高騰しており、「主要銘柄は依然として堅調が見込まれる」(Barclays CapitalのShah氏)という。
市場調査会社である米iSuppliは、太陽電池の売上高は2009年に世界的に低迷すると予測している。太陽電池市場で著しい成長を記録したスペインにおいて、政府による太陽光発電の助成政策が終了することも大きな要因とみられる。
しかし、Barcklays Capitalは、今回のインドの計画に加え、中国やギリシャが新たな太陽光発電普及政策を明らかにしつつあることが重要だと主張する。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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