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» 2009年07月28日 00時00分 公開

低損失/高耐熱のプリント基板材料、ミドルレンジの通信機器市場を狙う実装技術

伝送損失を抑えたプリント基板材料を市場投入する動きが活発化している。ミドルレンジからハイエンドの通信機器が対象だ。

[前川慎光,EE Times Japan]

 サーバーやルーターをはじめとした通信ネットワーク機器では、データの高速伝送という市場要求を背景に、プリント基板上を流れる信号の周波数が高周波化している。周波数が高まれば、信号を損失なく通過させるべきプリント基板そのものの悪影響が無視できなくなる。「一般的なプリント基板材料を使うと、伝送損失が原因でうまく信号を伝送できなくなる場合がある」(パナソニック電工電子材料本部電子基材事業部の商品技術グループで部長を務める高田俊治氏)。

 この問題の解決に向けて、伝送損失を抑えたプリント基板材料を市場投入する動きが活発化している(図1)。ミドルレンジからハイエンドの通信機器が対象だ。パナソニック電工は、この市場に向けた多層プリント基板向け材料「MEGTRON4」を開発し、2009年6月に量産を開始した。三菱ガス化学も同じ市場を狙った基板材料「CCL-EL230T-F」を開発し、同年6月に開催された「JPCA Show 2009」で展示した。「現在、顧客に評価してもらっており、早い段階で量産を開始したい」(同社の説明員)。

<strong>図1 高速伝送で高密度という市場動向に対応させたプリント基板材料</strong> (a)はパナソニック電工のブース。(b)は三菱ガス化学が展示したパネル。いずれも2009年6月に開催された「JPCA Show 2009」で展示したもの。

低誘電率を訴求

 通信機器に向けたプリント基板材料には、伝送損失が低いことに加えて、高い耐熱性が求められる。伝送損失を低くするには、比誘電率と誘電正接と呼ぶ指標を下げることが必要だ。比誘電率が4以下、誘電正接が0.005以下という数値が高周波数対応の目安である。一般的なプリント基板の比誘電率が4.4で、誘電正接が0.01程度であるのに対して、パナソニック電工が開発した基板材料は比誘電率が3.8、誘電正接が1GHzの周波数に対して0.005である。「通信機器に搭載するプリント基板は、面積が畳の半分程度と大きいものもある。この差は非常に大きい」(高田氏)。

 同社はこれまで、比誘電率が3.6で誘電正接が2GHzの周波数に対して0.002という基板材料「MEGTRON6」を提供してきた。ただし、スーパーコンピュータのほか、超高性能なサーバーやルーターに向けたもので、市場が限られていたという。「販売を開始した品種では、従来のMEGTRON6で開発した材料技術を活用したことで、高い特性を維持しつつ、ミドルレンジからハイエンドの市場を狙える価格に設定できた」(同氏)。一方の三菱ガス化学の基板材料の特性は、展示パネルによると、比誘電率は3.9、周波数1GHz時の誘電正接は0.006である*1)

*1. 同社従来品「CCL-EL230T」の比誘電率は3.8、誘電正接は周波数1GHzで0.005だった。これに比べて、耐熱性を高めたことを訴求する。

 高耐熱性は、通信機器の信頼性に直結する項目である。一般に、通信機器では、複数の配線層で構成した多層プリント基板を使う。この場合、さまざまな半導体部品をはんだ付けするフロー/リフロー工程で加える熱の悪影響を受けやすくなる。具体的には、接着されているはずの各層それぞれが、膨張して、ばらばらになってしまう「デラミネーション(層間はく離)」現象が起こりやすくなる。「かつては、235℃を3回加えるだけだったのが、今では260〜280℃を6〜10回加えることもある」(同氏)という動向が背景にある。両社ともに、デラミネーションが発生しないことを訴求している。例えば、パナソニック電工の基板材料のガラス転移温度(Tg)は176℃、三菱ガス化学の材料は235℃である*2)

 両社とも今後、誘電率を下げるために使っているハロゲンを使わずに特性を維持した材料の開発を進める。

*2. パナソニックはDSC法、三菱ガス化学はDMA法で測定した。

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