テレビ映像の高画質化の進展とは対照的に、音作りの難しさが増している。その最大の原因は、テレビの薄型化に伴って、スピーカを薄くしなければならなくなったことである。
テレビ映像の高画質化の進展とは対照的に、音作りの難しさが増している。その最大の原因は、テレビの薄型化に伴って、スピーカを薄くしなければならなくなったことである。音声や音楽を再生する出力装置そのものの性能が劣化している。これに加えて、ディスプレイの下側にスピーカを設置することや、ディスプレイの枠を狭めるためにスピーカを下に向けるという、テレビの外観のデザインを優先させたスピーカ配置も、音作りを難しくさせる要因である。
薄型化したスピーカや不自然なスピーカ配置は、音声出力の周波数特性を劣化させる。さらに、低音の再生が難しくなったり、再生する音声の明瞭(めいりょう)感を損ねたりといった悪影響を引き起こす。
このような課題は、スピーカそのものの工夫で改善するのが理想だ。だがそれには材料コストや開発コストが掛かってしまい、販売価格の低下が続くテレビには広く受け入れられないだろう。オーディオ信号をデジタル信号処理することが現実的な解だ。
従来から、さまざまな音響効果を付加するために、デジタル信号処理を施すオーディオ処理用(音響)DSP(Digital Signal Processor)が活用されていた。スピーカに起因した新しい課題を解決するためにも、このDSPが役に立つ。テレビの音作りに向けて、DSPの役割と重要度が増しているのである。
第1部では、薄型テレビの音作りの課題について概説する。第2部では、課題の解決に向けたオーディオ処理用DSPの処理内容や、製品化動向を紹介する。
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