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HD映像無線伝送のAMIMONが新戦略、無線LANチップ・ベンダーにIPをライセンス無線通信技術 WHDI(2/2 ページ)

» 2009年11月30日 00時00分 公開
[Junko Yoshida,EE Times]
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ライバルは60GHz帯

 AMIMON社にとって、市場状況は厳しさを増している。同社の無線通信方式「WHDI(Wireless Home Digital Interface)」の利点とは無関係に、最近ソニーがWHDIではなく、60GHz帯を使った無線技術に乗り換えた。

 ソニーは、2008年に発売したテレビ受像機「ZX1」に、AMIMON社の無線チップを採用した。しかしその後、AMIMON社が1080pに対応した品種を用意できていないことを知り、2009年秋に発売した新機種「ZX5」では同社の無線チップの採用を見送った。

 ソニーは、パナソニックと韓国LG Electronics社に続き3番目に、60GHz帯の無線チップをテレビに採用したメーカーになった。これらのテレビでは、ディスプレイとチューナーの間で、60GHz帯の無線を使って映像信号とオーディオ信号をやりとりする。3社はいずれも米SiBEAM社の無線チップを採用した。ソニーはチップ・ベンダー名を正式には公表していない。

 AMIMON社のマーケティングと事業開発担当のVice Presidentを務めるNoam Geri氏は、ソニーの最近の動きに対して、「われわれにとって損失で、残念だ」とコメントした。ただし、「WHDIは宅内のすべての部屋にハイビジョン映像を無線伝送可能であり、今後機器メーカーに必要になる技術だと強く信じている」と付け加えた。

 同氏は、ソニーの60GHz帯採用テレビは、いくつかの制限があると指摘した。例えば、ディスプレイとチューナー間の距離は50cm以上かつ10m以内にする必要がある。さらに、金属製のラックは使えないことなどである。

 AMIMON社は、依然楽観的だ。同氏は、「ハイビジョン映像の無線伝送に向けた、無線ホーム・ネットワークを構築するための準備はすべて整えた」と主張する。同社は、日立製作所やLG Electronics社、シャープ、ソニー、韓国Samsung Electronics社、米Motorola社とともに、HDCP(High Bandwidth Digital Content Protection)を使った著作権保護や、異なる解像度のディスプレイへの対応、機器制御などの技術仕様を策定した。「500ページにもわたるWHDI仕様の文書がその証拠だ」(同氏)。

ハードとソフトの役割をGPU/DSP性能に応じて変える

 以上のような取り組みを進めてきたにもかかわらず、AMIMON社は、注力する製品をテレビからパソコンに変えようとしている。「我々は、WHDI技術をノート・パソコン市場に売り込んでいるところだ」(Geri氏)。

 同社が現在連携しているパソコン・メーカーは、グラフィックス処理ブロックに対して、直接映像信号を送れるように、マザー・ボードにWHDIモジュールを搭載しようとしている。「WHDIモジュールを搭載したマザー・ボードは、2010年末に市場に登場する予定だ」(同氏)。さらにAMIMON社は、台湾のODM(Original Design Manufacturer)メーカーと協力して、PCI技術の標準化団体「PCI-SIG(PCI Special Interest Group)」が最近規定した「Display-Mini Card」に、WHDIを統合しようと画策している。AMIMON社によれば、このカードを組み込んだパソコンも、2010年末ころに発売されるという。

図2 図2 パソコンや携帯電話機に向けて柔軟性のある構成を提案 GPU(Graphics Processing Unit)またはDSP(Digital Signal Processing)の性能に応じて、ハードウエアとソフトウエアの役割分担を変える。図の最上部は、RFトランシーバ部とD-A変換回路部以外をソフトウエアで実現する場合、最下部はすべてをハードウエアで実現する場合のブロック図。

 同社は、パソコンや携帯電話機への搭載を目指して、ハードウエアとソフトウエアの役割分担をGPU(Graphics Processing Unit)またはDSP(Digital Signal Processing)の性能に応じて変える、さまざまなパターンを用意した(図2)。パソコンに加え、将来的には携帯電話機へWHDIを普及させて、家電メーカーに対してWHDIの採用をうながすのが同社の戦略だ。ディスプレイとチューナーを接続するケーブルの無線化のみならず、宅内全体での無線ネットワークの構築が同社の目標である。

圧縮か非圧縮か、60GHz帯か無線LANか

 AMIMON社は現状をひっくり返せるだろうか。同社が少なくとも1社の無線LANチップのベンダーを説得し、チップにWHDIを統合させることができれば、確実だ。 米Farpoint Group社のアナリストであるCraig Mathias氏は、「宅内での映像の無線配信には、新たな市場機会がある」と見ている。この市場での主な論点は2つに要約できる。1つは、映像を圧縮するか、非圧縮で送るかという点。もう1つは、60GHz帯の無線技術を使うか、(WHDIを含めた)無線LANを使うかという点である。

 同氏は、圧縮技術ではなく、重要度ごとに重みを変える符号化技術を使う点がAMIMON社のユニークな点だと考えている。とは言うものの、同社の技術は3Gビット/秒のデータ伝送速度を超える純粋な非圧縮伝送では無いと反論する読者がいるかもしれない。同氏は、宅内でのハイビジョン映像の非圧縮伝送が本当に必要かどうかという点で、意見は分かれていると説明した。

 重要なのは、無線LANチップのベンダーが、映像信号とIP(Internet Protocol)ベースのデータの両方を扱える、加入者宅内端末向け品種を提供できるかどうかだ。同氏は、「映像の無線配信の市場が大きいと考える顧客がいれば、そこに向けた品種を用意するのが最善だろう」と強調した。

 AMIMON社のWHDI技術を統合する可能性のある無線LANチップ・ベンダーはどこだろうか。米Intel社、米Marvell社、米Atheros Communications社、米Broadcom社はいずれも、大手ベンダーだ。同氏は、「わたしには分からないが、どのベンダーも可能性がある」と述べた。「宅内向けの機器を開発するシステム企業から問い合わせを受けることがあれば、無線LANチップ・ベンダーはすぐにAMIMON社に連絡するだろう」(同氏)。

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