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NIが12.5Gサンプル/秒の5GHzデジタイザを発売、テクトロニクスがA-D変換器を提供テスト/計測 モジュール式計測器

National Instrumentsは、帯域幅が5GHzと広く、サンプリング速度が12.5Gサンプル/秒と高いハイエンドのデジタイザモジュールを発売した。Tektronixとの共同開発品である。Tektronixが開発したA-D変換器LSIを採用することで、高い性能を実現した。

» 2011年05月10日 10時05分 公開
[薩川格広,EE Times Japan]

 National Instruments(NI)は、帯域幅が5GHzと広く、サンプリング速度が12.5Gサンプル/秒と高いハイエンドのデジタイザ(A-D変換)モジュール「NI PXIe-5186」を発売した(図1)。「業界最高の性能だ」(同社)と主張する。コントローラモジュールや各種モジュールと組み合わせて筐体(シャーシ)に収容し、自動テストシステムを構成する際に使う、モジュール型の計測器である。電子機器や半導体、自動車、航空/宇宙分野の他、粒子加速器をはじめとした大規模な物理実験施設などにおけるテストに向ける。

図1 図1 5GHz帯域幅のPXIe-5186の他、3GHz帯域幅のPXIe-5185も用意した 出典:日本ナショナルインスツルメンツ

 NIがPXIe-5186で広い帯域幅と高いサンプリング速度を達成できたのは、オシロスコープ最大手のTektronixが開発したA-D変換器LSIを採用したからだ。両社は2009年8月に、「高速デジタイザを共同で開発する」と発表しており、それが今回の新製品だという。

 NIによると、これまで同社は市販のA-D変換器LSIを用いて計測器を開発することで、部材コストを抑えるという戦略を採ってきた。Analog DevicesやTexas Instruments、Linear Technologyなどのアナログ半導体ベンダーが提供するチップを使っていたという。ところが「そうした市販品は、サンプリング速度が数Gサンプル/秒で頭打ちになっていた。一方で、高速シリアルデータバスの特性評価や検証、科学実験の多くで使われるパルス測定などのテストアプリケーションでは、これまで以上に高いデジタルサンプリング速度が必要とされている。現在そうした高速サンプリングに対応できるのは、Tektronixなどが提供しているスタンドアロン型(単体で動作する計測器)のオシロスコープだけだ」(NI)。そこでNIは、モジュール型計測器でも同様の性能を提供できるように、Tektronixと共同開発プロジェクトを立ち上げたと説明する。

図2 図2 新製品のデジタイザについて説明する日本ナショナルインスツルメンツの塩原愛氏

 Tektronixは今回、SiGeプロセス技術で製造する8ビット高速A-D変換器LSIと、そのA-D変換器と周辺回路をまとめたフロントエンドモジュールをNI向けに新たに開発した。特長は、広帯域と高速サンプリングに加えて、計測精度に大きく影響するA-D変換器の有効ビット分解能(ENOB)が高いことだ。具体的には、デジタイザの性能として5GHzにおいて5.5ビット、2.5GHzにおいて6ビットのENOBを確保した。「競合他社のデジタイザの中には、10ビットA-D変換器を搭載している機種もある。しかしそれらのENOBは、PXIe-5186よりも低いのが実情だ」(日本ナショナルインスツルメンツ プロダクト事業部 テクニカルマーケティングエンジニアの塩原愛氏)(図2図3)。

図3 図3 有効ビット分解能の比較 垂直(電圧)軸の分解能が高くても、有効ビット分解能(ENOB)が同じくらい高いとは限らない。
図4 図4 共同開発の意義について説明するテクトロニクスと日本ナショナルインスツルメンツの幹部 左はテクトロニクスのシニア・マーケティング・マネージャーの大石弘幸氏、右は日本ナショナルインスツルメンツのテクニカルマーケティングマネージャの岡田一成氏。

 なおTektronixとNIは、それぞれが供給するスタンドアロン型計測器とモジュール型計測器が市場ですみ分けできており、競合しないと考えていることから、今回の共同開発が実現できたという(図4)。すみ分けについては、Tektronixのスタンドアロン型は高精度の計測や、各種コンプライアンステストなどのようにアプリケーションに特化した用途が多く、NIのモジュール型計測器は計測の自動化や、多チャネルでさまざまな信号を扱う機能テストシステムの構築などに使われていると説明する(参考記事:なぜモジュール型計測器なのか、高性能化で選択肢が拡大)。

データの外部転送速度も向上

 PXIe-5186のもう1つの特長は、シャーシ内に組み込む他のモジュールとの間のデータ転送速度が700Mバイト/秒と高いことだ。シャーシのバックプレーンに接続するインタフェースに、PCI Expressのプロトコルを基に開発された計測/制御用の高速バスインタフェース規格であるPXI Expressを採用することで実現した。RAIDシステムなどの大容量記録装置に接続すれば、高いサンプリング速度で集録する大量のデータを比較的長い時間にわたって記録できる。

 同社従来のデジタイザモジュールでサンプリング性能が最も高かった機種は、分解能が8ビットで帯域幅が1GHz、サンプリング速度が2Gビット/秒の「NI PXI-5154」だったが、この機種はPCIベースのPXI規格に対応しており、データ転送速度は最大でも132Mバイト/秒にとどまっていた。PXI Express対応のデジタイザ「NI PXIe-5122」も製品化していたが、分解能は14ビットと高かったものの、サンプリング性能については100MHz、100Mサンプル/秒にとどまっていた。

LabVIEW用のジッター解析アドオンも用意

 今回発売したPXIe-5186のこの他の仕様は以下の通り。チャネル数は2つ。12.5Gサンプル/秒が得られるのは1チャネルのみを使用したときで、2チャネル同時使用時は6.25Gサンプル/秒。モジュールのサイズは、PXI Expressシャーシの3スロットを専有する。価格は448万円(税別)から。帯域幅が3GHzの「NI PXIe-5185」も用意しており、価格は308万円からである。

 さらにNIは、この2機種の発売に併せて、同社が供給する計測/制御アプリケーションソフトウェアのグラフィカル開発環境「NI LabVIEW」にアドオンして使う機能拡張オプション「NI LabVIEWジッタ解析ツールキット」も発売した。デジタイザで取得したデータを基に、入力信号のジッター特性を解析する際に使う関数ライブラリなどをまとめたキットである(図5)。価格は42万円から。

図5 図5  NI LabVIEWジッタ解析ツールキットで作成した計測アプリケーションの例 周期ジッターの最大値と最小値を計算したり、アイパターンを描いたりすることが可能だ。

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