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お湯の配管を「熱発電チューブ」に、10cmで1.3Wを取り出せる技術をパナソニックが開発エネルギー技術 エネルギーハーベスティング

ゼーベック効果を利用した熱発電素子の構造を工夫することで、発電効率を高めるとともに、その構造の素子をチューブ状に形成できるようにした。このチューブをお湯を流す配管として使えば、温泉の熱を利用する発電の規模や出力を拡大しやすくなる。

» 2011年06月20日 16時42分 公開
[薩川格広,EE Times Japan]

 パナソニックは、熱電変換材料と金属を独自の構造で積層した、チューブ状の熱発電素子を開発した。お湯を流す配管そのものを、「熱発電チューブ」として利用できるようになるという。長さ10cmのチューブを試作して評価したところ、1.3Wの電力を取り出すことに成功した。地熱や温泉熱を利用した発電に応用できる。

 今回パナソニックが開発したのは、pn接合部に温度差を与えることで起電力が発生する「ゼーベック効果」を利用した熱発電素子である。同社によると、同様にゼーベック効果を利用する従来の熱電変換素子は、p型とn型の熱電変換材料を並べて電極で接合した構造を採用しており、その構造が「π(パイ)」の形をしていることから「π型構造」と呼ばれている。これまでに報告されている温泉熱を利用した発電では、このπ型構造の素子を配管の外側に貼り付けて外部で配線をつないでいたため、熱を取り込む際のロスが大きく、信頼性にも課題があったという。同社が開発した新型の熱発電素子は、配管自体が熱発電の機能を持ち、熱の取り込みロスを減らせる上に、複雑な配線も不要になる。

 熱発電素子の構造を工夫することで実現した。具体的には、熱が流れにくい熱電変換材料と、熱が流れやすい金属を、熱の流れに対して傾斜して積層する構造である(図1)。この構造を採用すると、素子内部で周期的な温度分布が生じ、熱の流れと垂直の方向に電気が流れるという。同社はこの現象を独自に発見し、それを利用するためにこの構造を考案した。この新型素子と従来のπ型構造の素子に同じ大きさの熱量(90℃の温水と10℃の冷水の温度差によって生じる熱量)を供給して比較したところ、発電量が4倍に高まったという。

図1 図1 熱発電チューブの構造図と実験の様子 熱が流れにくい熱電変換材料と、熱が流れやすい金属を、熱の流れに対して傾斜して積層する独自の構造を採用した(左図)。この構造でチューブ状の熱発電素子を作製し、冷水中でそのチューブに温水を流すと、電力が発生してLEDが点灯する(右図)。出典:パナソニック

 熱電変換材料としては、BiTe(ビスマス・テルル)を用いる。この用途の材料としては一般的だが、同社によるとこの材料はのばしたり丸めたりする加工が難しい。そのため今回は、熱電変換材料と金属をあらかじめカップ状に成型しておき、それらを数多く重ね合わせて接合することでチューブ状の熱発電素子を作製した。

 なお同社は今回の開発成果の一部を、2011年6月22〜24日に米国のカリフォルニア州サンタバーバラで開催される「Electronic Materials Conference 2011」で発表する。

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