環境発電市場の成長が続いている。新技術の開発や各国政府の政策などが追い風となり、2021年には市場規模が44億米ドルに達する見込みだ。
英国の市場調査会社であるIDTechEXは、「エネルギーハーベスティング(環境発電)は、2021年には市場規模が44億米ドルに達すると予想される。また、2011年に環境発電に投入される金額は7億米ドルに上る見込みである」という調査報告を発表した。環境発電の開発企業は、バリューチェーン全体で数百社に上るという。環境発電は、自動車からスマートグリッドまで幅広く活用できる技術として期待を集めている。
2011年の時点では、環境発電技術の適用分野は、既に普及が進んでいる消費者向け電気製品が中心になる。ワイヤレスセンサーの分野では、2011年の1年間で160万台に環境発電技術が適用され、同分野で環境発電に投入される金額は1375万米ドルに上る見込みだ。
2011年に環境発電に投入されるとみられる7億米ドルの内訳を、アプリケーション分野別に予測したものが図1である。
図1に示したアプリケーション分野において現在、ハーベスタ(発電素子)として最も多く利用されているのは、太陽電池と、電磁誘導を利用した素子だ。これらはある程度成熟した環境発電技術である。しかし、これらの他にもさまざまな新技術が開発されていることから、以前は適用が困難だった分野にも環境発電が取り入れられるようになっている。
その一例が、熱から電力を生成するサーモエレクトロニクス(熱電発電)技術だ。米エネルギー省(DOE:Department of Energy)はBMWやGeneral Motorsと共同で、エンジンや排気ガスから出る廃熱を自動車の電気システムに使う電力に変換する研究に取り組んでいる。また、米航空宇宙局(NASA:National Aeronautics and Space Administration)は、サーモエレクトロニクスを利用して火星探査機に電力を供給している。この他、圧電素子を利用した環境発電も、小型で高効率という特徴から大きな関心を集めている。
2021年には、太陽電池、電磁誘導を利用するハーベスタ、サーモエレクトロニクス、圧電素子を利用した環境発電の4つは、産業機器向けセンサー市場においてほぼ同じ割合のシェアを獲得すると予想されている。ただし、消費者向け電気製品市場では太陽光発電の優勢が続くとみられる。
さらに、各国政府の政策も、環境発電の普及を促す要素となる。例えば英国は、すべての学校の教室にCO(一酸化炭素)センサーの設置を義務付ける新しい法律を制定した。米国では、自動車にタイヤ空気圧監視システムを搭載することが義務付けられており、そのセンサーやシステムに環境発電技術を適用する試みも始まっている。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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