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日本特化の環境発電向けICが発売、二次電池の補助電源を狙うエネルギー技術 エネルギーハーべスティング

いかに機器の充電の手間を減らすか――。エネルギーハーベスティング(環境発電)技術と二次電池の組み合わせが、1つの解になるかもしれない。

» 2011年08月09日 18時01分 公開
[前川慎光,EE Times Japan]

 いかに機器の充電の手間を減らすか――。エネルギーハーベスティング(環境発電)技術と二次電池の組み合わせが、1つの解になるかもしれない。東京エレクトロンデバイス(TED)は、二次電池に組み合わせて使うことを想定した環境発電用IC「P3110」の販売を開始した。

 P3110は、電磁波を対象にした環境発電用ICである。外付けアンテナで受信した電磁波をIC内部で直流に整流した後、昇圧して後段の二次電池に供給する役割を担う。環境発電やワイヤレス給電に特化したICを手掛けるPowercastが、TEDの企画に基いて設計/開発した。

図 図1 Powercastのリファレンスボード 東京エレクトロンデバイスが取り扱いを始めた環境発電向けIC「P3110」のベースとなった「P2110」を実装したリファレンスボード。緑色の板が外付けアンテナ。

 Powercastはこれまで、ワイヤレス給電に特化したIC「P1110」や、環境発電に特化したIC「P2110」を製品化していた(図1)。P1110は外付けアンテナの近くにエネルギーの放射源があることを想定しており、一方のP2110はエネルギーの放射源が遠方にある場合を想定し、P1110に比べて感度を高めている。いずれも、中心周波数は915MHzである。TEDが販売を開始したP3110は、P2110をベースに日本向けに幾つかの改良を盛り込んだ。

 まず、中心周波数を880MHzに変更した。これは、日本国内の携帯電話通信に使われている周波数帯域である。さらに、アンテナからエネルギーを受け取るときの感度(入力感度)を、従来の−11.5dBmから−21dBmに向上させた。帯域幅を狭め、共振の鋭さ(Q)を高めることで、感度を向上させている。Qを高めるとICの飽和レベルが下がってしまうが、携帯電話の基地局のごく近くでなければ、問題にはならないという。

 二次電池に供給できる電力レベルは、どのようなアンテナを外付けするかによって異なる。例えば、P3110がアンテナから受け取る電力が10mWのとき、IC自体の効率は50%程度で、二次電池に5mWの電力を供給できる。入力電力が小さくなるとICの効率も低下し、例えば、1mW入力時の効率は40%程度である。

IPSの薄型二次電池と組み合わせて提案

 TEDは、環境発電向け製品として、固体薄膜電池を手掛けるInfinite Power Solutions(IPS)の 固体リチウムイオン二次電池「THINERGY」を、日本市場向けに販売している(関連記事)。対象用途は、セキュリティカードやモバイル端末、センサー端末である。TEDがIPS製品の販売を始めると、ハーベスタと組み合わせて使いたいという要望があり、Powercastの環境発電向けICを取り扱うことになったという。

 IPSが製品化している二次電池の電池容量は、最大2.5mAhとそれほど大きくない。アプリケーションによっては、すぐに電池の残量が無くなってしまう。「しかし、環境発電技術と二次電池を組み合わせて使えば、発電量はごくわずかだとしても、利用者が意識しない間に二次電池を充電することができるだろう」(TED)という。

 ハーベスタには、電磁波以外にも、環境の光や熱、振動などさまざまなエネルギー源を対象にしたデバイスがある。TEDは今後、電磁波を対象にした今回の品種以外にも、ハーベスタ関連製品の取り扱いを増やす方針である。

<訂正あり> 記事初出時に、製品名を「P2210」と記載していましたが、正しくは「P2110」です。お詫びして訂正致します。記事はすでに修正済みです。

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