National Instrumentsが、「高周波(RF)テスト」の製品強化を続けている。「NIWeek 2011」の基調講演で、National Instrumentsがとりわけ多くの時間を割いたのが、RFテスト分野の製品紹介やデモだった。
National Instrumentsが、「高周波(RF)テスト」の製品強化を続けている。2011年8月2日〜4日(現地時間)に米国テキサス州オースチンで開催された「NIWeek 2011」の基調講演で、National Instrumentsがとりわけ多くの時間を割いたのが、RFテスト分野の製品紹介やデモだった。
同社は、2007年ころからRFテスト分野の研究開発を強化してきた(図1)。2011年5月には、高周波部品/システムの設計用ソフトウェアツールを手掛けるApplied Wave Research(AWR)と、RFテスト用の計測器や部品を手掛けるPhase Matrixの買収を発表するなど、現在もRFテスト分野への投資を継続している(関連記事、図2、図3)。
同社がRFテスト分野に注目している理由は、「無線機能を搭載した機器の多様化を背景に、自動テストの多くの事例で無線通信のテスト/計測が関係するようになってきた」(National Instrumentsの創業者でプレジデント兼CEOであるJames Truchard氏)ことにある。「例えばヘルメットやシューズといったように、これまでは無線とは無縁だった製品にも、無線機能が搭載されるようになってきた。今まではRFテストに無縁だった技術者も、RFテストにかかわらざるを得なくなる。ここに、当社のビジネスチャンスがある」(同社のAutomatedTest部門のSr.Group ManagerであるLuke Schreier氏)という。
同社はこれまで、モジュール組み込み型の計測/制御用ハードウェア「PXIシステム」を使うことで、製品出荷前の自動テストを効率的に進められることをアピールしてきた。採用する計測/制御用モジュールの構成を変えることで、それぞれの製品に適した統合テストシステムを構築できる。RFテストに関連した計測ツールや計測/制御ハードウェアは、自動テスト市場に取り組む上で、不可欠な要素というわけだ。
NIWeek 2011で明らかになったのは、計測/制御ハードウェアの高周波化への取り組みと、自動テスト工程のみならずICや機器の設計/試作工程にも、同社製品を展開する姿勢である。「現在の製品展開は、まだ始まりにすぎない。今後も、RFテスト分野の強化を続ける」(Truchard氏)。
まず、計測/制御ハードウェアの高周波化については、14GHzに対応したベクトル信号アナライザ(VSA)「PXIe-5665」を発表した(図4)。National Instrumentsは、6.6GHz帯に対応したベクトル信号アナライザ「PXIe-5663」とベクトル信号発生器(VSG)「PXIe-5673」を2009年に、6GHz対応のベクトルネットワークアナライザ(VNA)「PXIe-5630」を2010年に製品化していた。今回のNIWeekでは、VSAの対応周波数を一気に2倍以上広げた機種を発表したことになる。
基調講演や展示会場では、Agilent Technologiesの3Hz〜26.5GHzに対応したシグナルアナライザ「N9030A PXA」とPXIe-5665を比較するデモを見せていた。National Instrumentsがデモを通してして強調していたのは、線形性や隣接チャネル漏洩電力(ACP)といった指標は同等ながら、処理スピードが速いという点である。
FFT処理や平均値処理をPXIシステムのコントローラー側で演算したときの処理スピードは、上に挙げた競合他社品に比べて16倍、FPGAモジュールで演算したときの処理時間は、250倍にも高速化することを見せていた。PXIe-5665の帯域幅は50MHz、隣接チャネル漏洩電力比は−79.6〜−80.9dBc(デモ時の数値)。無入力時の雑音レベル(ノイズ・フロア)は−154dBm/Hz(1GHzにおいて)、位相雑音は−129dBc/Hz(800MHzにおいて、オフセット周波数が10kHzのとき)である。
PXIe-5665は、機能の異なる3つのモジュールで構成している。新型のダウンコンバータ「PXIe-5605」と、ローカルオシレータシンセサイザ「PXIe-5633」、中間周波数(IF)デジタイザ「PXIe-5622」である。PXIe-5665の価格は700万円から。2011年10月に出荷を開始する。
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