展示会場では、2011年5月に買収を発表したPhase MatrixのRF計測用モジュールと、National InstrumentsのPXIシステムを連携させ、26.5GHzに対応したベクトル信号アナライザを構成したデモもあった(図5)。Phase Matrixのプリセレクタ「PXI-1410」や、ダウンコンバータ「PXI-1420」、「PXI-1430B」、「PXI-1440」、ローカルオシレータシンセサイザ「PXI-1450B」を使い、取得した信号のスペクトルを表示するというもの。
ただ、26.5GHzと高い周波数の信号解析を必要とする用途はそれほど多くはない。例えば、民生機器に限って言えば、ほとんどが6GHz以下の無線通信方式を採用している。これほど高い周波数を使うのは、軍事/防衛や衛星、ごく一部の民生用途に限られる。なぜ、高周波化を進めるのかという質問に対し、同社CEOのTruchard氏は、高性能化と高周波への対応は、20年前から取り組んできた一貫した製品開発の流れだと説明するにとどまった。なお、Agilent Technologiesも、26.5GHzと高い周波数に対応したモジュール型のベクトル信号アナライザを、製品化している(関連記事)。
前述の通り、National Instrumentsは、自動テスト工程のみならず、無線通信に関連したICや機器の設計/試作工程にも、同社製品を展開する姿勢を見せている。「当社のPXIシステムは、量産時のシステムレベルのテストや機能テストに広く使われている。これからは、研究開発や設計段階のRFテストにもフォーカスしていく」(同社のAutomatedTest部門のSr.Group ManagerであるLuke Schreier氏)という。
研究、設計/試作工程のRFテストに、同社製品群を売り込む上で重要な役割を担うのが、2011年5月に買収したAWRの高周波回路設計ツール「Microwave Office」や、無線通信システム設計ツール「Visual System Simulator」である。「RFシステムの設計とLabVIEWを連携させることが可能になった。この点が当社(NI)にとって、重要なポイントだ。設計と検証、テストという各工程の接続性を高めることで、顧客の製品投入までの期間を短縮できる」(Truchard氏)という。
実際に、基調講演や展示会場では、AWRのVisual System Simulatorに、LabVIEWのプログラム記述(ブロックダイアグラム)を取り込んだデモを見せていた(図6)。無線基地局向けパワーアンプ(PA)の設計工程を想定したデモで、試作したPAとVSG、VSAでHIL(Hardware in the Loop)を構成し、PAの特性を実測した結果と、PAモデルのシミュレーション結果を比較していた。HILを構成するVSGやVSAに加え、ベースバンド信号を生成したり、解析したりするハードウェアには、当然のことながら、National Instrumentsの機種が使われていた。AWRのツールとLabVIEWを連携させた新ツールは、2011年後半に発表するという。
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