太陽光パネルは、供給過剰の状態が続いている。生産量を抑えなければ、太陽光パネルは価格の下落がさらに進み、メーカーの合併や倒産などが増える可能性がある。
太陽光発電業界に、またもや悪いニュースが届いた。米国の市場調査会社NPD Groupの傘下企業で、同じく市場調査を手掛けるSolarbuzzが2011年9月26日に発表したリポートによると、主要な太陽電池モジュールメーカーが生産量を削減したにもかかわらず、太陽光パネルの在庫の増加を防ぐことはできなかったという。供給過剰の状態はこのまま2012年も続き、太陽光パネルの価格はさらに低下していくとみられる。
価格低下の影響は既に出ており、インテルのスピンオフ企業であるSpectrawattの他、Evergreen Solar、Solyndraが2011年8月から9月にかけて相次いで破産を申請している。Solarbuzzは、「太陽光パネルの需要が供給に追い付くのは2012年後半」と見込んでいるが、その時期までに破産を申請するケースはさらに増える可能性がある。
Solarbuzzによると、供給過剰により、2011年の太陽光パネルの出荷価格は前年比で33%も下落しているという。同社は、2011年第3四半期における需要は前年同期比で20%増加していると算出する。だが、前期比ではわずか1%増加したにすぎない。この傾向から、太陽光パネル市場の失速は2012年前半まで続くとみられている。Solarbuzzは、こうした需要の停滞によって最も深刻な打撃を受けているのは欧州市場だと分析する。実際、欧州の市場は、2010年における太陽光パネルの世界売上高の78%を占めていたが、2011年にはそれが58%に減少している。同社は、「太陽光パネル市場が成長しているのは、欧州ではなく、中国と米国である」としている。
Solarbuzzは、供給過剰の責任の一端は、中国の大手太陽光パネルメーカーにあると述べる。中国のメーカーは、世界的に経済が低迷しているにもかかわらず、当初の計画通りに太陽光パネルを出荷し続けた。その結果、2011年末には4.4ギガワット(GW)分のパネルが過剰生産される見込みだという。中国の各メーカーは、2011年後半の需要を刺激しようとパネルの価格を引き下げているが、現状ではこうした策が功を奏したとはいえないようだ。一方、欧州市場の状況は、2011年第4四半期にかけて悪化の一途をたどるとみられる。Solarbuzzは、2011年第4四半期に、結晶系の太陽電池モジュールの価格が前期比で18%下落すると予測する。また、太陽光パネル関連メーカーの粗利益が、2011年第2四半期の時点で既に前期比50%も下落したことを考えると、2012年にはメーカーの合併や破産申告のケースがさらに増える見込みだとしている。
Solarbuzzでプレジデントを務めるCraig Stevens氏は、「利益は既に限界の水準にまで落ち込んでいるため、2012年には企業の合併や解散というケースが増えるとみられる」と述べた。
加えてSolarbuzzは、「中国メーカーは、2012年に生産量を前年比で50%増加する計画である。一方で、太陽光パネルの需要は前年比で25%しか伸びないため、価格低下や過剰供給の状態はさらに続くだろう」と予測している。このシナリオでは、各メーカーが生産削減の措置を取らなければ、太陽光パネルの過剰在庫は2012年末に22GW分に及ぶとみられている。同社は、「在庫を安定させるには、パネルの生産を11GW分削減する必要がある」と指摘する。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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