発売されたばかりのiPhone 4Sを分解し、主要部品のベンダーを分析した。本稿では、速報リポートとして、部品ベンダーのリストを掲載する他、主なチップのダイ写真や、分解の様子を数多くの写真でお伝えする。
筆者が所属するUBM TechInsightsは、Appleの新型スマートフォン「iPhone 4S」を店頭に並んだ2011年10月14日に入手して早速分解し、解析に着手した。そこでわれわれが見つけたものは? 2010年の夏にリリースされた初代「iPhone 4」との違いは? 本稿では、解析の速報リポートを数多くの写真を交えてお届けする。なお当社は、米EE Times誌と同じくUnited Business Mediaの傘下にある技術情報サービス企業である。
iPhone 4Sでまず注目したいのは、単一のデザインでGSMやCDMAといった複数の異なるキャリアプラットフォームに対応できるようになったことだ。とはいえ、これは驚くべきことではない。従来のiPhone 4でも、米国の大手携帯電話事業者であるVerizon Wirelessが2011年2月に新たに取り扱いを始めた機種からは、Qualcommが供給するマルチモード対応ベースバンドプロセッサ「MDM6600」が搭載されており、GSMとCDMAを含む複数の携帯電話規格に対応する準備が進んでいた(参考記事:Verizon版iPhone 4を分解、「iPhone 5」でのマルチモード展開が視野)。
世界各国の規格に対応可能な「ワールドフォン」の基盤は既に築かれていた。そしてUBM TechInsightsは今回発売になったiPhone 4Sの分解で、Qualcommが引き続きマルチモード対応ベースバンドプロセッサを提供しており、その型名が「MDM6610」であることを確認した。これは、Verizon版のiPhone 4はAppleが将来のワールドフォンに先駆けて設計変更を実施したものだという当社の事前の推測を裏付ける発見である。さらにこの発見は、Appleにベースバンドプロセッサを供給するベンダーがInfineon TechnologiesからQualcommに切り替わったことの確証にもなっている。QualcommはiPhone 4Sでベースバンドプロセッサの他にも、高周波トランシーバの「RTR8605」と電源管理チップの「PM8028」を供給している。
他にiPhone 4Sで大きなデザインウィンを手中に収めたのはBroadcomだ。同社は、従来機種のiPhone 4で獲得した無線チップセットのデザインウィンを維持しつつ、そのチップセットを上位品種に移行させている。具体的には、IEEE 802.11nの無線LANと、Bluetooth、FMラジオに対応したチップセット「BCM4330」だ。これと同じチップセットはSamsung Electronicsのスマートフォン「Galaxy S II」にも採用されており、Broadcomにとっては今回、それに続く大型のデザインウィンになった。
Cirrus LogicとDialog Semiconductorも、それぞれ、iPhone 4でのデザインウィンを引き継ぐとともに、iPhone 4Sではそれらのチップを上位品種に移行させた。具体的には、Cirrus LogicはオーディオコーデックICを供給しており、Appleはその品種をiPhone 4の「CLI1495」から「CLI1560B0」に変更している。同様にDialog Semiconductorは電源管理ICを提供し、品種は「D1815A」から「D1881A」に変わった。
iPhone 4とiPhone 4Sで次に大きな変更は、Appleがタブレット端末「iPad 2」をリリースした際に大きく報道された新世代アプリケーションプロセッサ「Apple A5」を採用したことだろう。これは、新世代のプロセッサはまずタブレット端末に搭載するというAppleの傾向を知る者にとっては、驚くことではない。前世代プロセッサの「A4」も、まず「iPad」に採用され、その後iPhone 4に搭載された。A5を内蔵するiPad 2が発表されたことで、iPhone 4の次世代機(iPhone 4S)がA5を採用することは既定路線だとみられていた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.