ホームネットワークを巡る規格の乱立は、これで終止符か。同軸ケーブル、電力線、電話線という3つのケーブルのどれでもデータをやりとりできる国際標準規格「G.hn」に対応した通信チップが、ようやくお目見えした。
音楽や映像といったマルチメディアコンテンツを、宅内にあるさまざまな機器間で自由にやりとりする「ホームネットワーク」――。乱立するさまざまな規格を統一しようという「HomeGrid Forum(ホームグリッドフォーラム)」の試みがようやく形になって現れてきた。対応規格に準拠した有線通信チップを、Marvell TechnologyとSigma Designsが「Embedded Technology 2011/組込み総合技術展(ET2011)」(2011年11月16〜18日、パシフィコ横浜)に出品した。いずれも、一般に公開されるのは今回が初だ。
有線のホームネットワークをめぐっては、古くからさまざまな企業や業界団体が、デファクトスタンダードを目指した競争を繰り広げてきた。宅内には、同軸ケーブルや電力線、電話線といった幾つかのケーブルが敷設されている。データのやりとりにはこれらのケーブルを媒体として使えるが、媒体ごとに業界団体が設立されるといった状況だった。
例えば、同軸ケーブルを媒体に利用する「Multimedia Over Coax Alliance(MoCA)」や、電話線を利用する「Home Phoneline Networking Alliance(HomePNA)」がある(関連記事)。電力線に限っては、「Consumer Electronics Powerline Communication Alliance(CEPCA)」や「HD-PLC Alliance」、「HomePlug Powerline Alliance」、「Universal Powerline Association(UPA)」など、幾つもの業界団体が互いに競争していた。
相互接続性や共存性のない規格の乱立が、ホームネットワークの普及を阻んでいるという指摘は多い。ホームネットワークを各家庭に導入する通信事業者やサービスプロバイダーの立場で考えると、どの規格が主流になるか分からない状況では、サービスの実用化を進めにくいのは確かだろう。
このような規格の乱立を収束させようという壮大な計画を掲げたのが、HomeGrid Forumである(関連記事)。2008年に誕生し、ITU-T(国際電気通信連合標準化部門)を舞台に、有線を使ったホームネットワーク向け統一規格「G.hn」の策定を進めてきた。2010年6月には物理層を規定した「G.9960」と、MAC層を規定した「G.9961」、共存仕様の「G.9972」が承認された。
現在、HomeGrid Forumに参画する半導体ベンダー各社が対応チップの準備を進めており、G.hn準拠の有線通信チップがようやく姿を現してきたという状況だ。HomeGrid Forumでは、インターオペラビリティ(相互運用性)を確認するプラグフェスタを実施しており、今後、規格に準拠した機器にロゴを付与する認証プログラムを開始する。
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