オーストリアのアナログ半導体メーカーであるaustriamicrosystemsは、車載エレクトロニクス分野の国内顧客に対するサポート体制を強化する。東京都品川区にある日本法人のオフィス内に品質保証ラボを開設、年内に稼働させ、初期の不良解析を24時間以内に実施できるようにする。
オーストリアのアナログ半導体メーカーであるaustriamicrosystems(オーストリアマイクロシステムズ)は、東京都品川区にある同社日本法人オーストリアマイクロシステムズ・ジャパン内に品質保証ラボを開設する。2012年前半にも不具合の解析に使う測定器などの設備を搬入し、年末までに稼働させる計画だ。2012年3月5日に東京都内で開催した報道機関向け説明会で明らかにした。
同社が注力市場の1つに位置付ける車載エレクトロニクス分野の国内顧客に対して、サポート体制を強化する狙い。「国内の顧客企業から半導体製品の品質に関する問い合わせを受けた際に、(国内半導体メーカーと同レベルの)24時間以内に初期の不良解析を実施できるようにする」(日本法人でカントリーマネージャーを務める岩本桂一氏)という。
この他、今回の説明会では、austriamicrosystemsのCEO(最高経営責任者)であるJohn Heugle(ジョン・ヒューグル)氏が登壇し、日本市場の位置付けなどについて説明した。「当社の事業は、世界の中でも特に日本とアジア他地域で力強く成長している。これらの地域は将来、当社にとって最も重要な市場になるだろう」(同氏)。
実際に、全世界の売上高の推移を地域別に見ると、日本を含むアジア全域の売上高比率は2007年の23%から、2011年には46%まで高まっている。日本とアジア他地域それぞれの比率については、「日本企業が購入し、アジア他地域に向けて出荷するように指示されることも多いので、分けた状態では見ていない」(同氏)として具体的には示さなかったが、成長率については、「日本もアジア他地域と同じペースで伸びている」(同氏)と述べた。「日本において進行中の案件の数は、ここ3年間で5倍に増えている」(同氏)。
日本市場で同社が狙うアプリケーション領域は、全世界におけるそれと変わらない。すなわち、スマートフォンやタブレットPC、各種デジタル家電機器などの「コンシューマー/通信」、FA機器やCT装置、超音波診断装置などの「産業/医療機器」、自動車のアクセルペダルやギアボックス、ハンドルユニット、バッテリシステムなどの「車載」を3本柱とする。
製品種別としては、光センサーや磁気センサーなどの各種センサーや、それらのセンサー用インタフェースIC、電源管理ICなどを手掛ける。アナログ半導体の競合他社に対する差異化点としては、「消費電力が低い上に精度が高い製品や、機能集積度が高い製品を提供できる」(同氏)ことを挙げた。「低消費電力をうたうアナログ半導体メーカーは他にもある。当社は、“超”低消費電力だ。さらに、ノイズの観点でも他社の追随を許さない。例えば、MEMSマイク大手のKnowles Electronics向けにアナログICを供給しており、低ノイズという特長によって同ジャンルのICでは80%のシェアを獲得している。CTスキャン装置でも、当社の低ノイズICを活用することで、患者に照射される放射線量を従来の1/6に低減した事例がある」(同氏)。
さらに同社は、アナログASICにも注力しており、売上高に占める比率が非常に高い点が他のアナログ半導体メーカーと大きく異なる。特に産業/医療機器向けでは全世界の売上高の9割、車載向けでは同7〜8割をASIC製品が占める。日本でもこの傾向は変わらない。
なお同氏は、日本にASICや汎用製品の設計開発を担うデザインセンターを開設したいという意向も示した。「スケジュールは新規案件の増加、売り上げの増加次第だが、将来的に検討していきたい」(同氏)と話している。
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