2011年、米国では太陽電池パネルメーカーの破産が相次いだ。中国勢との競争の激化が、その一因だと言われている。米国は、中国産の太陽電池を搭載したパネルに関税をかけることを仮決定した。
米商務省は、中国製の結晶系太陽電池パネルに対し、2.9〜4.73%の関税を課すとの仮決定を発表した。軽い警告に相当する措置となりそうだ。この措置は、太陽電池業界に直接的な影響はほとんど及ぼさないとみられているが、太陽電池をめぐる両国の貿易戦争に対する懸念を緩和できると期待されている。今回、仮決定が発表されるまでは、業界のアナリストらは、関税率を約20%と予測していたという。
米国の業界団体である太陽エネルギー産業協会(SEIA:Solar Energy Industries Association)で、通商競争力担当バイスプレジデントを務めるJohn Smirnow氏は、「今回の関税率が実際に適用されたとしても、米国の太陽電池市場に大きな影響が及ぶことはないだろう」と述べている。
今回の関税率は、Solarworldをはじめとする太陽電池パネルメーカー7社で構成される団体が申し立てた訴訟を受けて提示された。Solarworldは、米カリフォルニア州とオレゴン州に製造拠点を置くドイツの太陽電池メーカーである。この団体は、中国の太陽電池パネルメーカーが製造コストを下回る価格で製品を販売している他、中国政府の補助制度が世界貿易機関の規則に違反しているとして訴えを起こしていた。
同団体は、申し立ての中で、「太陽電池パネルの価格がこの1年間で約40%も急落したのは、中国政府が最大400億米ドルもの投資や融資保証を行ったためだ。さらに、欧州をはじめ世界各国において太陽電池パネルを購入するための政府補助金が削減されたことにより、供給過剰に陥った」と主張していた。
米国の太陽電池パネルの新興企業として注目を集めていたSolyndraは、こうした業界の動向に巻き込まれ、2011年8月に倒産して1100人の従業員を解雇する結果となった。2011年はSolyndraの他にも、太陽電池メーカーの破綻が相次いだことから、クリーンテクノロジ市場全体に衝撃が走った。
米商務省は、中国の太陽電池パネルメーカーの中でも成長が著しいTrina Solarに対して、最も高い4.73%の関税率を課す。一方、中国最大手の太陽電池パネルメーカーであるSunTechに対する関税率は、2.9%と最も低い。また、この他の中国パネルメーカーに対しては全て、関税率3.59%を適用する予定だという。
Trina SolarとSunTechは、米商務省による厳しい監視の下に置かれる役割を自ら引き受けた。米国の調査機関は、これら2社に対してのみ集中的な調査を実施することができる。Trina Solarに対する関税率が高いのは、同社が中国政府からの補助金を他社より多く受け取っているからだ。
また、米商務省によると、今回決定した関税率は、中国製の太陽電池を使用したパネルであれば、第三国から輸入する製品にも適用されるという。ただし、米国または第三国のメーカーが製造した太陽電池を搭載したパネルについては、中国国内で製造された物であっても、関税の適用の対象外となる。しかし、申し立て側は、これら両方の製品に対して関税をかけるよう要求している。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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