Twitterなる奇妙なコミュニケーション手段が登場した時、「こんな珍奇な通信手段、一刻も早く消えて無くなってしまえ!」と願ったものです。しかし間違っていたのは、私でした。
われわれエンジニアは、エンジニアである以上、どのような形であれ、いずれ国外に追い出される……。いかに立ち向かうか?→「『英語に愛されないエンジニア』」のための新行動論」 連載一覧
本連載の第2回「英語に愛されない者は何をしても愛されない、という出発点」の番外編をお届けします。
(エピソードその1)「逢ひみての 後の心にくらぶれば 昔はものを 思はざりけり 〜権中納言敦忠〜(あなたとお会いした後に比べると、昔は、なーんにも考えていなかったんだなーと思います―江端意訳―)」。
ご存じの通り、有名な百人一首の和歌です。私はこの和歌を初めて聞いた時、「お前、民衆をなめとんのか」とひとり突っ込んだものです。こんなひどい為政者(いせいしゃ)が、我が国の大臣を務めていたかと思うと、貧困や重税に苦しんでいただろう民衆が抱いていたであろう怒りがふつふつと湧いてきたものです。
(エピソードその2)1990年代の中ごろ、当然、携帯電話機など無かった時代、電話機のプッシュダイヤルを使って、1回の電話で12文字だけを送る「ポケベル」を使った通信手段が日本中で爆発的にはやっていました。公衆電話に10円玉を入れて12文字のメッセージを送信し、受話器を下して相手からの12文字の返信を待つというコミュニケーション手段です。
当時の若者は、直接会話をすれば10円10秒で足りる会話を、電話ボックスを1時間以上占拠して、たった20回のメッセージの往復だけに400円も費していました。電車の人身事故が発生し、身動きが取れなくなって公衆電話に殺到するサラリーマンの列ができている公衆電話で、このポケベル通信をやっていた若者に、私は思わず後ろから「バカヤロー!」と叫んでしまったのを覚えています。
百人一首の和歌とポケベルの共通点は、わずかな文字数でメッセージを送る「短文コンテンツ通信」ということです。上に説明したような背景もあって、私は、短文コンテンツ通信が嫌いになりました。ですから、Twitterなる奇妙なコミュニケーション手段が登場した時、「こんな珍奇な通信手段、一刻も早く消えて無くなってしまえ」と願ったものです。
この連載の初めての打ち合わせの時に、「Twitterって、なんとなく、好きじゃないです」と担当編集さんに語った瞬間、――場の空気が凍った―― 「あ、私は『何か』を失言したのだな」と直感しました。
そして、その理由、今ならよく分かります。本連載の第1回「『海外で仕事をしたい』なんて一言も言っていない!」のアクセス状況を、担当編集さんから教えてもらった時、私は腰が抜けるほど、びっくりしました。初日のアクセス数が、私の個人Webサイトの2年分のアクセス数に相当していたのです。
これは、ちょっとあり得ない。物理的にも不可能な値ではないか、と思いました。思い付いたのは、TwitterとFacebookの影響でした。今では、毎日、連載のページの最後にある、ツイート数が増えていくのを見るのが楽しみになり、そのコメントを読むのが日課となりました。確かにこれはうれしい。執筆にも気合いも入ろうというものです。
私も研究員の端くれですので、一応TwitterやFacebookの仕組みや使い方は知っていました。アカウントも持っています。しかし、使い始めることができませんでした。それはなぜでしょうか。
友達がいないからです。(友達が「少ない」のではなく「いない」という点に留意してください)。この現実は、私にとっては意表を突くものでした。「Twitterが、なんとなく、好きじゃない」――そりゃそうだろう。始める前からつまずくような通信手段を、誰が好き好んで使いたいと思うものか。私は、イソップ物語の「すっぱい葡萄(ぶどう)」の原理でTwitterを嫌っていたわけです。なんという矮小(わいしょう)な思考体系。皆さん、おおいに私を笑ってやってください。
しかし、「ええい、もうそんなことは言ってられん。Twitterでも、何でも始めるぞ」と意を決し、第1回を公開したその日の夜からごそごそと設定作業を進めました。とりあえず、私の個人Webサイトの日記更新でもつぶやいてみるかと思ったのですが、そのやり方がよく分からない。第1回の連載コラムに対し、Twitterでつぶやいていただいた方をフォローしてみたのですが、このままでは、「私のつぶやき」は届かないらしい。どうやら、「私のアカウントをフォローしてもらう」必要があるらしいのです。
どうしてよいのか分からなかったので、その方たちに、「ツイートしていただいて、ありがとうございました」と、簡単なお礼のリプライを送付させていただきました(これで良かったのかな?)。多分、皆さんのうち、何名かは、私の「つぶやき」をフォローしてくれるだろうと期待しております(経過については、また後日ご報告したいと思います)。
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