外国企業による中国への投資が減少しているようだ。その要因として、中国政府は、ビジネス誘致政策を推進する米国、欧州の経済危機、中国よりも人件費が安い東南アジアへの工場の移行などを挙げている。
中国は、決して焦っているわけではない。しかし、「これまで大いに頼ってきた海外の投資家を失うのではないか」という不安を抱き始めているかもしれない。
中国の商務省が2012年8月に発表した最新のデータによると、2012年前半における米国の対中国直接投資総額は、2011年前半と比べて3.2%減となる16億3000万米ドルだったという。同省が2012年8月16日に発表した最新の月間データも、良好とはいえない結果になっている。
米国をはじめとする世界各国の対中国直接投資は、2012年7月に2カ月間連続で減少した。これにより、2012年1〜7月の7カ月間における直接投資による流入額は、2011年の同期間に比べて3.6%減となる666億7000万米ドルとなった。
中国商務省の広報担当者を務めるShen Danyang氏は、China Daily紙の取材に応じ、海外からの投資の減少について語っている。このことからも、事の重大さが分かるだろう。
だがShen氏は、商務省が発表したデータをまったく重視しなかった。それどころか、投資額が減少した原因として、米国が製造業を自国に回帰させる政策を進めていることを指摘した。加えて、ユーロ圏の債務危機や、中国における土地の供給不足と人件費の上昇なども挙げている。
中国政府は、対中国の投資が減少している要因を世界に知らしめるべく、商務省のZhang Xiangchen氏を、China Daily紙の個別インタビューに対応させた。Zhang氏はそのインタビューの中で、「現在、外国メーカーが中国国内の工場を近隣諸国に移設しているが、これについては心配するに及ばない。外国からの投資の質が上がるからだ」と語っている。
しかし、政府関係者が「心配する必要はない」と言う場合、たいていは心配しなければならない場合が多い。また、前述のZhang氏の発言にあった“近隣諸国”というキーワードに注目する必要がある。
インドネシア政府が2012年8月に発表したところによると、「Foxconn」のブランド名で知られる大手EMS(電子機器の受託製造サービス)の鴻海精密工業(ホンハイ)は、インドネシアに最大100億米ドルを投じて、中国工場で生産するよりもさらに安価な製品を製造する予定だという(関連ニュース)。
鴻海精密工業の他にも、数社の多国籍企業が、中国に置いていた製造拠点を、さらなる低コスト化が可能な東南アジアへと移行している。
Zhang氏は、「中国に対する投資額の減少は、今後数カ月にわたり続く見込みだ」と指摘する。しかし、「短期的に見ると、その影響は限定的なものに過ぎない」との見解を示し、不安材料は何もないことを強調した。
Zhang氏も、中国に対する米国の投資額が減少した要因として、オバマ政権が推進している「SelectUSA」プログラムに焦点を当てた。Zhang氏は同プログラムについて、「米国は、国の推進機関を設立することによって、中国をはじめとする外国からの投資を誘致しようとしている」と説明する。
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