“コミュニケーション術”といっても、構える必要はありません。ほんの少しコツを知っていれば十分です。例えば皆さんは、部下に「頑張ってね」と言いますか? それとも、「頑張ってるね」と言うでしょうか。たった1文字違うだけで、相手に伝わるメッセージは大きく異なります。
「エンジニアの育成については人事部を当てにできない」と思った田中課長ですが、一方で、人事部も企業のスリム化に伴って業務効率化を余儀なくされており、人事部本来の仕事をしにくい環境になっていることも分かってきました。開発部門に人材育成機能を持たせることも、中堅メーカーである川崎テックデザインでは、すぐには実現できそうにありません。
さて、仕事に対する意識が少しずつ変わってきている入社2年目の佐々木さん。ですが、田中課長は、佐々木さんの自発性はまだまだ弱いと感じているようです。田中課長は、良きアドバイザーの松田課長のススメもあって、この数カ月、コミュニケーションについて学んできました。
コミュニケーションによるマネジメントスタイルには、ティーチングとコーチングの2つがあります。どのように違うのか、田中課長と佐々木さんのやりとりでみてみましょう。
佐々木君、設計の進み具合はどうだい?
以前、課長に「入門書でいいから高周波の勉強をしろ」(第5回)と言われたこともあって、何冊か本を読破しました。ただ、どうしても分からないところがあって……。
(お、分からないと素直に言えるようになってきたな。) どんなことが分からないんだい?
実は寄生容量や反射率、定在波比など電磁気学で苦手だったことが山ほど出てきて。
高周波では回路を集中定数回路として扱えないから、分布定数回路という概念が必要になるんだ。それはね……(説明が続く⇒ティーチング(Teaching))
奥が深いですね。
今回の製品のCPU周りのクロック周波数は数GHzだろう?線路における位相差とインピーダンスを考慮して、分布定数の伝送路として考えないと、エライ目に遭うぞ。
デジタルの世界に、高周波の知識が要るなんて知りませんでした。もう1ついいですか?
なんだい?
今、試作に入る前に実験をしてるんです。シミュレーションでは問題ないのですが、測定するたびに周波数特性のデータがばらつきます。
データがばらつくんだね。なぜだと思う?(⇒コーチング(Coaching))
うーん……それは……。
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