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» 2012年11月26日 09時00分 公開

「サンマとサバ」をファジィ推論で見分けよ! 史上最大のミッションに挑む「英語に愛されないエンジニア」のための新行動論 ―番外編―(3/4 ページ)

[江端智一,EE Times Japan]

「サンマとサバ」を分離できない!

 さて、この「電子レンジ」の要求仕様のポイントをまとめてみます。

1)10種類の食材を、2種類のセンサーだけで判別しなければならない
2)加熱している最中に、それらのセンサー値の変化量から食品を判別するので、適度に加熱するには、初期の段階で食材を判別しなければならない

 例えば、シュークリームの生地を、途中までサンマと思って加熱を続けると、真っ黒こげになって手遅れになってしまう、ということです。

 私は工場から提供された、各食材の加熱時の「温度」と「湿度」の時系列データを、全てプリントアウトしました。これらのデータシートから、比較的判別が容易な2つの食品群の分離と、さらに、各食品群を個別の食品に分離するポイントを見つけ出していきました。

 例えば、

  • 「茶碗蒸し」は、容器に入ったままであり、最初の2分間では温度変化は小さいが、湿度変化が大きい
  • シュークリームは、温度も湿度もいきなり急上昇する

などの現象を使って、分離を続けていったのです。

 また、食材の質量によって生じる、温度や湿度の変化点の発生時点を、最初の2〜3分程度の変化量から、ファジィ推論で補正するという手法を採用しました。図らずも、ファジィ推論を、単なる電子レンジの「ブランディング」のためだけでなく、実際に有効に活用することができたことで、研究者としてのプライドをぎりぎり保つことができました。

 しかし、「サンマとサバ」だけは、どうしても分離して判別することができませんでした

 「サンマ」は、開き、またはそのままの形状で、一方の「サバ」は一般的に切り身の状態で電子レンジの庫内に放り込まれます(とにかく、そういうことになっていました)。もし、距離センサーがあれば、このような判別は簡単です。なぜなら、ターンテーブルは回っていますので、長い棒状のサンマであれば、ターンテーブルの回転速度と同期した距離の変化が表われるはずであるからです。私は、この段階でもう一度、上司と工場に、電子レンジに距離センサーを付けることを上申したのですが、やはり却下されました。

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