人工知能、ロボット、化学、センシング技術――。日進月歩のエレクトロニクス分野を、さらに大きく変える可能性を秘めた10人紹介する。
未来を切り開くことは、常に不安と危険が伴うものだ。しかし、今回取り上げる10人の先駆者たちは、大胆にも前人未到の地に足を踏み入れようとしている。彼らの革新的な想像力と、未知の世界に挑む断固たる姿勢は、未来へと進む人間の“あるべき姿”を示している。ここで紹介する10人のうち2人は、人間ではない。自分自身をキャラクター化した“アバター”と、近未来的な研究センターである。
David Shepler氏はIBM研究所で「JEOPARDY! チャレンジプログラム」のマネジャーを務めていた。Alex Trebek氏が司会を務めるNBCテレビのクイズ番組「JEOPARDY!」で、IBMのスーパーコンピュータ「Watson」が人間のチャンピオンに勝利した後、Shepler氏はWatson研究チームの事業責任者として、AI(Artificial Intelligence:人工知能)技術の医療分野への応用に取り組んでいる。
現在、米国最大手の医療保険会社であるWellPointのネットワークに加入している患者は、多くの情報に基づいた確信度の高い診断結果を得るためにWatsonを利用している。Watsonが次に取り組もうとしているのは、金融サービスや、政府関連の管理業務、小売り分野である。最近、Shepler氏はIBMのSmarter Energy Research Instituteのプログラムマネジャーに就任した。同機関は、将来のスマートグリッドを定義付けるため、予測分析、システムの最適化、先進コンピューティングモデルを開発中である。Shepler氏自身も今、ニューヨーク州ニューパルツのゼロエネルギー住宅で暮らしている。
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R. Stanley Williams氏はHP(Hewlett Packard)の研究部門であるHP Labsのシニアフェローで、コグニティブコンピューティングや量子科学など、多様な分野の将来技術を開発している。Williams氏の研究グループは、“メモリスタ”と呼ぶ新型の回路素子を実現する半導体プロセス技術を初めて開発したことで知られている。
メモリスタは、米カリフォルニア大学バークレー校の教授であるLeon Chua氏が発表した回路素子で、電流が通過すると抵抗値が変化し、その状態を保持するものだ。抵抗、コンデンサ、インダクタに次ぐ第4の受動素子と言われている。
Williams氏は、DRAMとフラッシュメモリの特性の優れた部分を併せ持つメモリスタのような抵抗変化型メモリ(ReRAM)が、今後10年間で、DRAMやフラッシュメモリを置き換えると予測している。
HPは、ReRAMを初めて商用化すべく、SK Hynixと共同開発を進めている。しかし、多くの大手半導体メーカーもReRAMや相変化メモリなどの競合製品を商用化する予定で、競争は激化しそうだ。こうしたメモリを手掛けるメーカーには、Adesto Technologies、エルピーダメモリ、富士通、GLOBALFOUNDRIES、IBM、Macronix、Nanya Technology、NEC、パナソニック、Rambus、Samsung Electronics、SanDisk、シャープ、ソニー、STMicroelectronics、TSMC、Winbond、4DSなどがある。
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