Rodney Brooks氏はRethink Roboticsを設立し、会長兼CTO(最高技術責任者)として未来のロボットの開発に取り組んでいる。同社は最近、補助ロボット「Baxter」を発表した。Baxterは米国の労働者の仕事を奪うのではなく、労働者と共同で作業をして生産性を高めるために開発された。
Brooks氏は、労働賃金の安い国外に仕事が流出しないよう、製造分野を回復させる新しいタイプの補助ロボットを開発したいと考えている。
同氏は、iRobotの創設者でもある。それ以前には、MITのComputer Science and Artificial Intelligence(コンピュータ科学/人工知能)研究所の所長を務めていた。
Brooks氏は、行動型ロボット工学を、iRobotとRethink Roboticsの基礎に置いている。だが、次の10年間はこの方針を拡張させ、人間の労働者のあらゆる動きとの融合を図っていきたいようだ。ただし、目標はあくまでも「補助労働者」として人間の労働者とともに作業をすることであって、労働者に置き換わることではない。
関連記事:囲いから解き放たれるロボット、人間の生産性を高める“協働”へ
IBMのスーパーコンピュータ「Watson」や、Appleの「iPhone」に搭載されている人工知能(AI)「Siri」の反応は、時として“生意気だ”と感じることがあるだろう。そこで、次の10年は、もっと好感を持てる態度を示すバーチャルアシスタントが採用されそうだ。
例えばGoogleは、Siriのような音声認識技術を検索エンジンに既に組み込んでいる。だが、Creative Virtualが開発した「Lucy」ほど人間らしい仕草をするバーチャルアシスタントを実現している企業は他にない。
LucyはSiriのように音声を認識しないし、Watsonのようにデータマイニングをリアルタイムで行う能力も持っていない。しかし、“彼女”は人間の仕草を知りつくしている。質問が入力されるのを待つ間は、人間のようにそわそわする。また、質問を理解できないとき(このようなことはよくある)のうろたえたような表情は、まさに人間そのものである。
Lucyを含むアバターたちは、電話オペレータを介するサービスなどで、人間のオペレータに代わって活躍することが想定されている。
今後10年のうちに、Lucyのような十数人のアバターには、Siriのような音声認識能力や、Watsonのような強力なデータマインニング能力、3Dホログラフィック技術も組み込まれ、われわれは人間と話しているのかアバターと話しているのか、ほとんど分からなくなるだろう。
米テネシー州のVanderbilt大学Intelligent Mechatronics研究センターの主任研究員であるMichael Goldfarb氏は、方向を感知するMEMSチップとマイコンを搭載した高性能(スマート)な義肢を開発している。この義肢は、人間の手足の自然な動作を模倣するという。
Goldfarb氏がこれまで開発した中で最も優れた義肢は、膝関節用と足関節用の2個のモーターによって駆動する義足で、本物の足に匹敵する範囲の動きを再現できる正確なモーションコントロールを実現した。同氏によると、義肢の高性能化の鍵は、次の動きを予測するアルゴリズムだという。この義肢の最初の使用者は、16歳の少年Craig Hutto氏だ。Hutto氏は、米フロリダ州ガルフコーストを旅行中、サメに襲われるもそれを撃退したことで米国内で有名になったが、そのときに脚を失った。同氏は現在、「最も難しいのは、残っている本物の脚と義足の歩行ペースを合わせることだ」と語っている。
現在は、Freedom InnovationsがGoldfarb氏からライセンスを取得し、義肢を根本から変えようと開発を続けている。
この他、Goldfarb氏は、脊髄を損傷した患者が普通に歩行できるよう、動力内蔵型の高性能な外骨格システムの開発に取り組んでいる。
関連記事:どんな姿にも変形できる極小ロボット、タンパク質に着想を得てMITが開発
Leo Gross氏はIBMチューリッヒ研究所に所属する科学者である。同研究所は、走査型トンネル顕微鏡(Scanning Tunneling Microscope)を使って原子レベルの観測に成功し、この功績によって、IBMフェローのGerd Binnig氏とHeinrich Rohrer氏は、ドイツの物理学者であるErnst Ruska氏とともにノーベル賞を受賞した。
Gross氏の率いる研究チームはBinnig氏とRohrer氏の業績を一歩進め、原子間の化学結合の画像化に初めて成功した。これにより、新しい材料の開発が容易になるほか、科学者は自然界で発見された未知の物質の構造を解明できるようになるだろう。
次の10年間で、Gross氏の研究が、太陽電池を大きく変える新しい有機材料や有機EL、グラフェンなど炭素を使用した半導体の開発につながるかもしれない。
Gross氏は、IBMのFabian Mohn氏、Nikolaj Moll氏、Bruno Schuler氏、Gerhard Meyer氏、スペインのサンティアゴ大学のAlejandro Criado氏とEnrique Guitianand Diego Pena氏、さらに仏Toulouse Cedexにあるフランス国立科学研究センターのAndre Gourdon氏とともに、世界で初めて個々の原子間結合の画像化に成功した。
関連記事:「シリコンもグラフェンも超える」、新たな半導体材料をスイスの大学が発表
【翻訳:上村弥生、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.