外国特許データベースの検索により、IBMのCZTS太陽電池に関わる米国公開特許出願状況
の調査を試みた結果を以下に示す。
太陽電池用材料の選択指針として、シリコン(Si)を起点とする化学量論的置換ダイヤグラムがある(図A-1)。
化学反応における量的関係に関する理論から太陽電池に利用する元素の組み合わせを説明するものだ。このダイヤグラムは、周期律表のIV族を化学量論的に実現する組み合わせを階層的に示すものであると同時に、太陽電池材料を網羅するものになる。CZTSは化学量論的置換ダイヤグラムの第3階層に登場する組み合わせである。
CIGS太陽電池から始まり、CZTS太陽電池へと継続されている東京応化工業との共同開発を続けてきたIBM。しかし、台湾DelSolarやソーラーフロンティア(昭和シェル石油の太陽電池事業担当関連会社)との共同開発関係を次々と構築してもいる。その目的は何であろうか?
2010年9月27日に、IBMは太陽電池の生産を手掛ける台湾DelSolarとCZTS太陽電池の共同開発に合意した*12)。
*12) DelSolarが発表したニュースリリース(PDF)。
その翌月の2010年10月19日には、IBMはCIS太陽電池の製造・販売事業を手掛けるソーラーフロンティア(昭和シェル石油の太陽電池事業担当関連会社)とCZTS薄膜太陽電池セルの共同開発を行うことで合意した*13)。
*13) ソーラーフロンティアの発表資料(Webページ)。
これら一連のIBMと各社の共同開発合意の背景は、つぎのように考えられる。
*14) 昭和シェル石油グループのCIS太陽電池への取り組みは以下の通り(Webページ)。1993年:CIS太陽電池研究開発をNEDOから受託、1995年:CIS太陽電池の事業化を決定、2006年:昭和シェルソーラーを設立、2007年:商業生産開始、2010年:昭和シェルソーラーからソーラーフロンティアへ社名を変更、2011年:1GW級生産工場を建設。
各社合意の2年後、2012年8月30日、CIS太陽電池事業に取り組むソーラーフロンティアは、IBM、東京応化工業、台湾DelSolarの3社と共に、CZTS薄膜太陽電池に関する共同開発の成果として変換効率が11.1%に達したことを公表した*15)。
*15) ソーラーフロンティアのニュースリリース(Webページ)。
この成果について特許出願状況を調査した。まず、ソーラーフロンティアのCZTS太陽電池日本特許出願に注目したが、日本公開特許は全て親会社である昭和シェル石油から特許出願されていることが分かった。そこで、昭和シェル石油の日本公開特許出願に注目した。
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