では、CZTS太陽電池開発に競合は存在しないのだろうか? IBMを中心とするグループだけなのだろうか?
IBMと同時期に、CZTS太陽電池の技術開発に着手していた企業として米DuPontがある。DuPont講演資料では、CZTS太陽電池の変換効率として、通常のガラス基板上で8.5%を、フレキシブルSUS/塗布ガラス基板上で6.0%を、それぞれ達成したことを公表している*17)。
*17) 「Copper Zinc Tin Sulfide/Selenide (CZTS) for Printed Thin Film PV」(2012/7)(PDF)。
講演内容から、DuPontはプリンテッド・エレクトロニクス*18)を目指したCZTS太陽電池技術開発を狙っていることが分かる。したがって、データセンターへの電力供給用CZTS太陽電池を狙っているIBMとのすみ分けは、技術開発当初からできていることになる。
*18) 関連記事:「実用化はどこまで? プリンテッド・エレクトロニクス業界の開発競争を読む」
2012年10月17日のセミナーでは、DuPontは反射防止膜がない状態でのCZTS太陽電池の変換効率が8.5%(実効領域では9.6%)であると報告*19)しており、公表変換効率を見る限りIBMと同レベルにある。
*19) 「Solution Processes to CZTS Thin Film Solar Cells」(PDF)、「Solution Chemical Routes to High Efficiency Cu2ZnSn(S,Se)4 Thin-Film Solar Cells」(PDF)
DuPontの出願状況を確認しておこう。外国特許データベースの検索により、DuPontのCZTS太陽電池に関わる米国公開特許出願状況の調査を試みた結果を以下に示す。
上記DuPontの研究報告から分かるように、大面積化したときに太陽電池の変換効率がそのまま維持されないのは、これまでの多くの太陽電池材料と同様である。
しかしながら、今回の図1から、
ことが分かる。CZTSは筋の良い太陽電池材料である可能性が感じられる。
最後に、米Stanford Universityの講演資料に基づき、CZTS太陽電池の研究開発状況を紹介しておこう。
図2はCZTS太陽電池の変換効率向上の推移を示したものである。この図からも、CZTS太陽電池の変換効率は時間軸に対して、直線的に向上していることが分かる。大学/研究機関で作製される太陽電池のセルサイズは小さいものであることを考慮する必要はあるものの、企業並みの変換効率が達成されていることが分かる。
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