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ST-Ericssonとルネサス モバイルは、なぜ失敗したのかビジネスニュース オピニオン(1/2 ページ)

モバイル技術を手掛ける2つの会社が、存続の危機に立たされている。成長しているモバイル市場において、なぜST-Ericssonとルネサス モバイルはうまくいかなかったのか。著者は、ビジネスモデルを市場に合わせて転換できなかったことや、中国の携帯端末メーカーのシェアが伸びてきたことなどが、その要因ではないかとみている。

» 2013年03月28日 14時30分 公開
[Junko Yoshida,EE Times]
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 2013年3月、STMicroelectronicsとEricssonが、両社の合弁会社であるST-Ericssonを解消することで合意したと発表した。

 Ericssonが、2GからLTEに対応するマルチモードモデム技術を引き取り、STMicroelectronicsが、LTEマルチモードモデムを除く既存のST-Ericsson製品と、一部の組み立てラインやテスト施設を引き取るという(関連記事:“足かせ”だったST-Ericsson、親会社が解消に合意)。

 一方、日本では、ルネサス エレクトロニクスが2013年3月12日、同社の100%子会社であるルネサス モバイルが手掛けるモバイル事業について、その方向性を見直すと発表した。ルネサス エレクトロニクスは今後、同事業を売却するのか、またはそれに代わる別のビジネスモデルを模索するのか、さまざまな選択肢を検討していくようだ(関連記事:「Qualcommと肩を並べる」はずだったルネサス モバイル、事業売却へ)。

 ST-Ericssonとルネサス モバイルは、売却の可能性もあるという点から、数年前のTexas Instruments(TI)やFreescale Semiconductor、Analog Devicesと同様に、携帯電話向けベースバンド事業部門を手放す方向に進むのではないかとみられる。

 米国の市場調査会社であるStrategy Analyticsのアナリストを務めるSravan Kundojjala氏は、2013年3月18日に発表した解説記事の中で、「ST-Ericssonが解消されることになった要因としては、複数企業の統合によるレガシー製品の重複や、再建計画の度重なる変更などが挙げられる。ST-Ericssonは、当初の事業計画を遂行することしか頭になかった」と述べている。

 業界観測筋は、ルネサス モバイルが失敗した要因について、ST-Ericssonの場合と同様の見解を示しているようだ。ルネサス モバイルは、Nokiaのワイヤレスモデム事業と、ルネサス エレクトロニクスのモバイルマルチメディア事業を統合した企業だからである。

ST-Ericssonのマルチモード対応ブロードバンドモデム「M7400」

 Kundojjala氏の見解は、おおむね正しいが、重要なポイントが1つ欠けていると思われる。従来のビジネスモデルでは、欧米の携帯端末メーカーだけをサポートしていればよかった。だが、モバイルの世界市場で勝ち抜くには、このようなビジネスモデルはもはや通用しない。ST-Ericssonとルネサス モバイルがそれを認識できなかったことも、両社が窮地に追い込まれた原因ではないだろうか。

 10年前までは、主に欧米の携帯端末メーカーからデザインウィンを獲得できれば、それで十分だった。当時は、MotorolaやNokia、Sony Ericsson(現在のソニーモバイルコミュニケーションズ)などが、世界市場のシェアの約90%を握っていたからだ。

 しかし現在は、こうした欧米の携帯端末メーカーのシェアは40%程度にすぎない。残りのシェアは、中国メーカーが握っているという。

 米国の市場調査会社であるCanalys Researchによれば、2013年における中国のスマートフォン市場は、2億4000万台規模に達する見込みだという。一方、米国の市場規模は、1億2500万台と予測されており、中国市場の方がはるかに規模が大きいことが分かる。

 さらに、現在では、大半のスマートフォンが中国で製造されているという事実もある。

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