Googleは自身の仕掛けた戦略に多くの人を巻き込み、Google Glassに注目を集める手法には長けている。しかし、ウェアラブルコンピュータの歴史で言えば、Googleはこの分野のパイオニアではない。
筆者は10年以上前に、米国防総省国防高等研究事業局(DARPA:Defense Advanced Research Projects Agency)のウェアラブルコンピュータに関するプログラムを紹介した。現在、数多くの小規模企業がウェアラブルコンピュータを開発しているが、これらの企業が手掛けているのはフィットネス愛好家向けの製品が多い。フィットネス分野では、ヘルスケア分野のような法規制に関わる問題が発生しにくいからだ。
Googleは、Google Glassのマインドシェア(ブランドなどの注目度)を確実に獲得している。だが、必ずしもマインドシェアがマーケットシェアに結び付くわけではない。同社が今後解決すべき課題は依然として山積している。例えば、一般ユーザーが身に付けたいと思う製品にするには、電池の持続時間を延ばすことが重要だ。
将来的には、Appleや他のメーカーも、市場が驚くようなウェアラブル製品を投入してくるかもしれない。Appleの「iWatch」に関するうわさは以前から存在するが、その他にも“iBelt”や“iShirt”などが登場するのだろうか。さらには、これらのウェアラブル機器が連携して機能するようなシステムも開発される可能性が高い。
Philipsをはじめとする欧州のメーカーの研究チームは長年にわたり、導電性の糸の開発に取り組んでいる(関連記事:電源としても機能する“賢い布地”実現へ、米国で研究が進む)。これらの研究チームが目標としているのは、ウェアラブルセンサーを直接、衣服に縫い付けることだ。これは実に素晴らしいアイデアだが、まずは、腕時計やメガネ、ベルトの形状をしたウェアラブルコンピュータの実用化が先になるだろう。
編んだり織ったりできる電子機器が登場するとなれば、エレクトロニクス業界とファッション業界の距離が、より近づくことも考えられる。「ハローキティ」の形をしたスマートフォンケースが作られるようなものだ。
便利なウェアラブルコンピュータの実現には解決すべき課題が多く、実用的な製品が登場するまでには、まだ数年かかると予想される。だが、次世代ヒット商品が誕生する瞬間が待ち遠しいのは確かである。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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