「TECHNO-FRONTIER 2013」(テクノフロンティア2013)の見どころの1つだった「無線給電技術」。本格的な普及期が目前に迫るスマートフォン、携帯電話機など向けのモバイル機器用無線給電システムに向けた製品、技術展示が相次いだ。
ケーブルを挿すことなく、置くだけで充電が行える無線給電。スマートフォンや携帯電話機、ゲームのコントローラなどバッテリ駆動のモバイル機器で、一部実用化が始まっているが、本格的な普及はこれから。無線給電技術はまだまだ黎明(れいめい)期にあるため、各種機器間で互換性を担保する関連規格も多く存在する。
現在、最も先行している無線給電規格は、Wireless Power Consortium(WPC)が提唱する「Qi」(チー)だろう。唯一、実用化されている無線給電規格として、その知名度は日増しに高まっている。
一方で、スマートフォン向けチップセットで高いシェアを持つQualcomm(クアルコム)や大手スマートフォンメーカーであるSamsung Electronics(サムスン電子)が中心となって立ち上げたAlliance for Wireless Power(A4WP)による規格や、Googleやスターバックスなどが参画するPower Matters Alliance(PMA)なども登場。「WPCが先行しているものの、他の規格も世界的な有力企業が提唱しているため、将来的にどの規格が標準になるかは全く分からない」というのが、無線給電システムに向けたデバイスを製造する半導体/部品メーカーの共通見解だ。
多くの無線給電規格が存在する中で、無線給電関連デバイスメーカーは、各規格に対応した製品開発を進める。さらには、1つのデバイスで複数の規格に同時対応する「マルチスタンダード製品」の製品化も増えつつある。
日本IDTは、WPC1.1 Qi準拠のトランスミッタICとレシーバICの他、「業界で初めて」(説明員)というWPCとPMAの両規格に準拠するデュアルモードレシーバICのデモを披露した。デュアルモードレシーバICをスマホなどにモバイル機器に搭載すれば、WPC、PMA双方の送電装置を区別なく利用でき、利便性が高められる。さらに、同社は、既に発売済みのWPC1.1 Qi準拠の出力電力5W対応のワンチップトランスミッタIC/レシーバICに、MOSFETなどを外付けし、出力電力15W(15V・1A)の無線給電を行う試作デモも行った。「WPCの規格が固まり次第、ワンチップIC化して販売する予定」(説明員)とする。
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