こんにちは。江端智一です。
今回は、いかなる戦(いくさ)においても、最も難しいと言われている「撤収戦」について、特に、「英語に愛されないエンジニア」の海外協業プロジェクトを想定して検討してみたいと思います。
海外協業プロジェクトの立ち上げは大変です。
特に、英語に愛されないエンジニアであるあなたが、ロクな目に遭わず、それを回避する手段が絶望的に存在しない中で、並々ならぬ苦労を強いられることは、これまでの連載で説明してきた通りです。
そのようにして生み出したプロジェクトに、あなたが愛着を感じるのは当然のことです。
しかし、多くのプロジェクトがそうであるように、あなたのプロジェクトも、いくつもの問題点にぶつかり、解決不能な矛盾が発生し、そして、どうしてもビジネスモデルやキャッシュフローが回せないことが少しずつ見えてきて、その事実がプロジェクトメンバー全員に浸透されていくこともあるでしょう。
すると、そのプロジェクトは失速し始め、「失敗」というアラートが点滅を開始します。関係メンバーは徐々に脱落しはじめ、上層部が頻繁に定期的な業務報告の提出を求めるようになり、そして、会社からはキャッシュ(現金)という名の実弾が前線に送り込まれなくなってきます。
一方で、プロジェクトを諦めきれないメンバーがプロジェクトの存続にしがみ付き、正当な命令系統を無視して暴走を始め、実質上のプロジェクトリーダーであるあなたは現場のコントロールができなくなる――。こうして海外協業プロジェクトは、関係者の心をむしばみながら壊れていくのです。
ここからは、「英語に愛されないエンジニア」に特化した、プロジェクトの撤収戦の具体的な方法についてご説明致します。
どんなプロジェクトであれ、だいたい以下の5つの状態のどれかにあてはまります。
クラスA:協業事業が主力事業となる
クラスB:事業化はしたものの、黒字事業にまでは至っていない
クラスC:事業化は断念。共同開発した技術を、特許発明として共同出願したのみ
クラスD:共同技術開発は未達または失敗。市場ニーズや分析のみ完了
クラスE:キックオフだけで、実質成果なし。技術・財務担当責任者は事実上の逃亡。海外の共同開発チームも形式的に存在しているだけ
今回は、クラスDとクラスEの、まったく救いようのない状況から成果を絞り出し、プロジェクトの撤収を図る方法について検討します。
まず、自分がそのプロジェクトで、どのような立ち位置にいるのかを確認してください。事実上のプロジェクトリーダーまたはリーダーなのか、あるいはオブザーバーなのかを確認するのです。
オブザーバーであれば、機を見て逃げ出しましょう。面倒に巻き込まれる前にとっとと逃げ出すのが正解です。プロジェクトを実体的に運営している主体であると認定した場合は、「逃げ出せない」と腹をくくっていただく必要があります。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.