現在、同社の主力製品となっているのがコネクティビティ向けの「IQxel-M」である。1台のテスターに最大4台のワイヤレス機器(被測定物)を接続して、並列にテストすることができる。このマルチDUT機能によって、従来のようにDUTを1台ずつ順次テストしていた場合に比べて、その測定時間は半分以下にすることが可能となった。さらに、Wi-FiやGPS、Bluetoothといった複数の無線規格を同時にテストできる「Multicom」機能も備えている。マルチDUT機能とMulticom機能を組み合わせると、DUTを1台ずつテストする手法に比べてテスト効率を最大5倍に高められるという。
1台のテスターに接続できるDUT数を増やし、テスト効率をさらに向上できるようにしたのが新製品の「IQxel-M8」である。現行のIQxel-Mに比べて、地上デジタル放送系やナビゲーション系の測定機能を省き、Wi-FiやBluetoothなどの無線規格に対応する測定ハードウェアとポート数を増やした。MIMO対応のDUTを最大4台まで並列にテストすることも可能である。
NFC向け専用テスター「IQnfc」は、2014年2月に開催された「Mobile World Congress(MWC)2014」に合わせて発表した。PCと接続して用いることで、コネクティビティ向けやセルラー向けの無線テスターと同様に、NFC応用機器の検査を効率よく行うことができるという。
同社は、テスト効率のさらなる向上に向けた新技術の開発にも取り組んでいる。その1つがOTA技術である。現在はテスターとDUTをケーブルでつないで検査している。OTA技術を用いると接続用のケーブルが不要になる。テスター自体の機能を大きく変更することではないが、コンパクトな電波暗室(チャンバー)の中に複数のアンテナとDUTを入れた測定環境を実現することで、接続ケーブルを使わずに検査を行うことが可能となる。「ケーブルの着脱に要する時間の短縮に加えて、テスト自体の高速化も可能になるため、検査工程全体の生産性向上につながる」とみている。佐藤氏は、「数年以内にケーブルレスのテスト環境を実現したい」と話す。
ワイヤレス機器については、キーデバイスとなる無線ICチップが米国などで開発され、そのICチップを用いて日本企業がモジュール化し、中国などで最終製品に仕上げられている。このようなグローバルなサプライチェーンが出来上がっている中で、「研究開発、設計/検証段階や量産計画において、日本でも意思決定が行われている。このため、日本のユーザーに対しても、当社のテスト環境をきっちりサポートしていくことは重要である」(佐藤氏)と述べ、日本市場におけるサポート体制のさらなる強化も検討している。
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