IBMが2014年7月に発表した、EUV(極端紫外線)リソグラフィスキャナーに関する最新テストの結果を、いぶかしむ業界関係者が少なくない。今回のIBMのテスト結果は、EUVの実用化に向けてどのような意味を持つのだろうか。
IBMは2014年7月、EUV(極端紫外線)リソグラフィスキャナーに関する最新テストの結果を発表した(関連記事:IBMがEUVのスループットで記録更新、1日637ウエハー)。しかし、ある業界観測筋は、「その内容に意図的な虚偽がある」として、懐疑的な見方をしている。IBMは、今回のテストにおいて「飛躍的な進歩を達成した」としながらも、その成果がEUV装置の限られた一面にしか適用されないことを認めている。
IBMが2014年7月に発表したところによると、米国ニューヨーク州アルバニーにある同社の研究施設において、ASMLのEUV装置「NXE3300B」スキャナーを使い、44Wの光源を用いて1時間当たりウエハー34枚という安定した速度で、1日当たりウエハー637枚を処理することに成功したという。IBMでEUV開発プログラム担当マネージャを務めるDan Corliss氏は、「NXE3300Bの稼働時間は77%で、部分的なダイも含む全てのウエハー1枚当たり、83のイメージフィールドにおいて、20mJ(ミリジュール)の照射量を実現した」と述べている。
Semiconductor Advisorsの社長であるRobert Maire氏は、こうしたテスト結果に対して異議を唱えている。同氏は、EE Timesとの電子メールを通じた取材の中で、「IBMのEUV印刷テストは、正確だとは言い難い」とし、以下のように指摘している。
IBMのテストでは、レジストを塗布していない空の状態のウエハーが使用されているため、画像は全く印刷されていない。つまり、何も処理されておらず、印刷もされず、何も生産されていない。ただ単にウエハーが、投入用のFOUP(Front Opening Unified Pod/搬送用キャリア)から出力用のFOUPへと移動しただけのことだ。
実際のところ、ニューヨークのIBMには637枚ものウエハーは存在していない。空のウエハーを装置から取り出して同じものをもう一度入れ直し、何度も再利用したためだ。今回のテストで唯一実証されたのは、装置が1日当たり637枚のウエハーを機械的に動かすことができるという点である。これについては、30年間使い続けたステッパーでも容易に対処可能だ。また、今回適用された20mJという露光量では、既存のレジスト技術によって実際に利用可能な画像を生成するには不十分だが、この問題については都合よく省かれてしまっているようだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.