多額の負債を抱えている東京電力。「返済はやめた」とは言えませんが、「原発やめる」とも言えないのは、なぜなのでしょうか。そこには、東京電力だけでなく、政府や金融機関、「原子力損害賠償支援機構」なるものの事情が複雑に絡み合っているという背景がありました。これらを、かの有名な「あしたのジョー」にたとえて説明してみます。
電力シリーズ最後のテーマは、「どうして電力会社は、原子力発電を捨てて逃げ出さないのか?」でトリを飾りたいと思います。
東京電力は今年の4月30日に3年ぶりに「黒字」になったと発表しました(参考記事)。これを聞いた時、私は本当にビックリしました。だって、そのひと月前に「震災3年 原発事故の損害額11兆円超に」という記事を読んだところだったからです(参考記事)。
『きっと、なんか、誰かがうまくやってくれているのだろう』 ―― と、正直、この話題はスルーしようと思いました。だって、「黒字」と「損害額11兆円」ですよ。どう考えたって変ですよ。複雑で面倒くさい話に決まっていますよ。
とはいえ、せっかく、今、「電力」をテーマに執筆させていただいているしなぁ、と思い直して、情報を集め始めてみました。
方針としては、一部の人だけが知っている(と当人だけが主張している)「極秘情報」やら、「陰謀」「利権」という用語は一切使わないで、誰もがアクセスできる新聞やニュースや公開されている情報だけを使って検討することにします。
では最初に、「黒字」の話から始めます。
黒字額は1014億ですが、それは、電気料金の引き上げ分2430億円と、賠償費用分として原子力損害賠償支援機構から交付された1兆6657億円を利益として計上して、なんとかひねり出した、―― 「作為的に作られた黒字」 ―― のようなのです。
なんでそんな面倒なことをしてまで利益を演出したのかというと、どうやら、その「黒字」が、金融機関から融資を受ける条件だったらしいです(新聞に書いてあったことです)。
さて、ここで「原子力損害賠償支援機構」なる、聞いたことのない名前が登場します。
これが一体何なのか調べてみました。私の理解では以下の2つの役割があるようです。
(1)東京電力の経営権支配のために、国が送り込んだエージェント
(2)東京電力だけでは払い切れない賠償金を、一時的に国から東京電力に流し込むトンネル機関
まず(1)に関してですが、「原子力損害賠償支援機構」は、2012年7月に、東京電力の優先株式を1兆円で獲得し、議決権ベースで過半数強を有する筆頭株主になりました。こうして東京電力は、実質上国有化されました。
そして(2)に関しては、「原子力損害賠償支援機構」を通じて、東京電力に、これまで31回、合計5兆円の支援資金が流し込まれています(もちろん、東京電力にはこの支援資金を返済する義務があります)。
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