前編に続き、SSDの性能低下が起こる過程を解説する。今回焦点を当てるのは、SSD製品のベンチマークだ。ベンチマーク値は性能を知る指標にはなるが、その値を正しく解釈するためには、SSDのクセなど、必ずおさえておきたいポイントがいくつかある。
SSD(Solid State Drive)の性能を定量的に計測するためには、ベンチマークソフトを使うことが多い。PC専門の雑誌やWebマガジンなどではふつう、代表的ないくつかのベンチマークソフトによってSSDの性能を評価した値が掲載されている。ディープなPCユーザーがSSDを独自に評価したベンチマーク値を、ホームページやブログなどに載せることもある。
ベンチマークソフトは特定の利用条件で性能を測定した結果である。現実の利用実態を反映しているとは限らない。それでも、性能を評価する物差しとして、何らかの手段は必要とされているし、ベンチマークソフトによるテスト結果は、その有力な手がかりとされている。
ただし、同じストレージでもハードディスク装置(HDD)とSSDでは、ベンチマークソフトに対する挙動がかなり違う。ベンチマークのテスト結果を現実へと解釈するときに、SSDに特有のクセをあらかじめ知っておく必要がある。HDDとSSDで違いが生じる大きな理由は、HDDが書き込み性能と読み出し性能があまり変わらないのに対し、SSDでは書き込み性能と読み出し性能で大きな差異があることだ。より具体的には、読み出し性能に比べ、書き込み性能が大幅に低くなる傾向が強い。さらに、読み出しと書き込みの比率による性能変化は直線的ではない。書き込み動作が少し交じるだけで、SSDの性能は大きく変化する。
例えば、ランダム書き込み(書き込み動作が100%)のベンチマーク値が1、ランダム読み出し(読み出し動作が100%)のベンチマーク値が10のSSDがあったとしよう。実際の動作は、書き込みと読み出しが入り交じることが多い。そこでランダムな書き込み/読み出し動作で、書き込み動作が10%、読み出し動作が90%という条件が、実使用条件にほぼ等しいとする。ここでユーザーが想像するのは、ベンチマーク値が1から10の間で、10にかなり近い値になりがちである。なぜなら、動作の90%は読み出しだから。
ところが、実際はまったく違ってくることが多い。SSDコントローラベンダーであるLSI社が公表した資料によると、書き込み10%/読み出し90%の条件では、ベンチマーク値(IOMeterによるIOPS値)は1.5〜2.5になる。書き込みが10%ほど交じるだけで、性能はおよそ1/5以下に下がってしまう。
ベンチマークに関わる問題はまだある。ベンチマーク対策を施してあるSSD製品が少なくないことだ。前編で、読み書きするデータの大きさやアクセス手法などによってSSDの性能が変わってくると記述した。これは言い換えると、SSDの開発企業が、特定のデータサイズやアクセス手法などに対して高い性能が出るように、SSDの仕様を調整できることを意味する。
ベンチマークソフトでは、SSDに対してランダムにアクセスするテストと、SSDに対してシーケンシャルにアクセスするテストが、標準的である。ランダムアクセスのデータサイズ(ブロックサイズ)は4Kバイト、シーケンシャルアクセスのブロックサイズは128Kバイトであることが多い。
このためか、SSD製品の中には、ランダムアクセスのIOPS値はブロックサイズが4Kバイトのときにピークとなっており、シーケンシャルアクセスのデータ転送速度はブロックサイズが128Kバイト以上になると最大速度になるものがある。
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