後輩:「江端さん。今の日本に、四日市ぜんそく、水俣病、イタイイタイ病のような公害が存在していますか?」
江端:「いや、今は、責任の所在と賠償問題の訴訟のフェーズになっていると思う」
後輩:「現在の公害の発生が抑止されているのは、1967年に制定された公害対策基本法(今の環境基本法)のおかげだとは言えませんか」
江端:「……あ!」
後輩:「環境問題の対策が、必ずしも『地球や自然に対して有効な手段を取り得ない』とは言いきれないんじゃないですか?」
ぼうぜんとしている私を尻目に、後輩は、
「ただ、ですね。この地球温暖化の問題は、4大公害問題やオゾンホール問題とは、ちょっと違うところもあるので、注意してください」
と言って、以下の話をしてくれました。
例えば、4大公害問題にしてもオゾンホール問題にしても、しょせんは人間が自分で作り出した問題を自分で解決しただけ(マッチポンプ)、ともいえます。
ところが、CO2は自然界にも普通に存在している物質ですし、地球は万年オーダーで温暖化と寒冷化を繰り返していますから、人間の作り出したCO2の排出だけが地球温暖化を招いているとは、直ちには断定しにくいのです。
4大公害問題に対して、企業側の弁護に立った大学教授や科学者は、工場排煙や排水と健康被害は無関係であるいう主張を裁判で展開していましたし、オゾンホール問題にしても、当初はフロンガスが原因であると考えることに反対する国(の政府)も多くありました。
特にフロンガスは冷媒として大変優れた物質であったので、産業界からの規制を反対する声は極めて大きかったのです。
これは、現在のCO2削減の対策と、全く同じ状況にあるともいえます。
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