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日本の隠れた半導体優良企業「メガチップス」(後編)“フルターンキーサービス”の提供に注力(1/2 ページ)

積極的にM&Aを行う日本のファブレス半導体企業メガチップス。その背景には、チップ設計から製造、組み立て、品質管理までフルカバーの“ターンキーサービス”を提供したいという考えがあるからだ。

» 2014年12月11日 12時15分 公開
[Junko YoshidaEE Times]

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“ターンキーサービス”の提供を目指して

 メガチップスはシステムベンダーと常に密接な関係を築いてきたことから、システムに対して徹底的な知識を有することがメガチップスのチップ設計の強さになっている。しかし、同社は“雇われ設計部隊”であったことはないと自負している。

 メガチップス社長の高田明氏は、「チップ設計において最も難しいことの1つが、製品の定義だ。当社は顧客企業と共同で、顧客の望むASICを設計している。これに対し、日本のシステム企業は歴史的に“チップ設計部隊”に『これを作ってくれ』とだけ依頼し、設計部隊も疑問を挟むことなく、『最善を尽くします』と対応するだけだ」と語る。

 メガチップスはファブレスとして、常にASIC設計のフロントエンドに焦点を置いてきた。「当社の強みはシステムLSIの最上位となるアルゴリズムとアーキテクチャを設計し、開発することだ」と高田氏は語る。一方、メガチップスに欠けていたのがバックエンド事業だ。この部分は、同社はこれまでNECやルネサス エレクトロニクスなどの国内メーカーに外注してきた。

 高田氏は、「川崎マイクロエレクトロニクスの買収によってバックエンド事業が手に入った。補完関係を築ける買収だった」と振り返る。同氏は、川崎マイクロエレクトロニクスが、米国、中国、台湾を含め、世界中に事務所を構えていることにも注目している。メガチップスには、ない点だからだ。

 しかし、川崎マイクロエレクトロニクスの買収には、別の側面もあるように見える。

 数年前にルネサスがASICビジネスから退却し始めた時、フロントエンド設計にメガチップスを、バックエンドにルネサスを使っていた顧客は慌てふためいた。そうしたメーカーは、メガチップスに“フルターンキーサービス”、つまり、チップ設計からプロセスノードの選定、ファウンドリの手配、組立て/試験および品質管理までを、総合的に要求したのである。メガチップスが川崎マイクロエレクトロニクスを必要としたのは、このようなニーズに応えるためだ。

photo DisplayPortをUSB Type-Cで使うための仕様策定が進んでいる

 では、STMicroelectronicsからのDisplayPort事業の買収に関してはどうだろうか。高田氏は、メガチップスは「ディスプレイIC市場の新参者ではない」と強調する。

 メガチップスは、韓国を除き台湾および中国で製造される大型ディスプレイパネル向けのタイミングコントローラ市場で60%のシェアをもつ。

 一方のモバイル用ディスプレイ分野では、タイミングコントローラは既にシステムドライバICに搭載されつつある。

 高田氏は、スマートフォン、セットトップボックス、TVの分野において今後の成長を目指すためには、DisplayPortが必須だと考える。同氏は、これらの端末/機器のポートがHDMIのみになるとは考えていないからだ。VESA(Video Electronics Standards Association)は、DisplayPortをUSB Type-Cで使えるように仕様を策定していて、高田氏はこれに期待している。

 メガチップスは2014年4月、米国Vidatronicへの出資を発表した。Vidatronicの電源マネジメント技術を獲得したいとの思惑からだ。「これらの技術を当社のASICに活用し、将来のチップ事業におけるIP(Intellectual Property)としても利用できるようにしたい」と高田氏は説明する。

センサーハブ市場を狙う

photo SiTimeのMEMS発振器を見せる高田氏

 最も最近発表されたM&Aが、MEMS発振器大手の米SiTimeの買収である。これは、メガチップスがグローバルなIoT市場への進出を果たそうとする“シナリオを完成させる”ものだ、と高田氏は語る。センサーハブやサブGHz無線技術の開発に新しく参入したメガチップスにとって、SiTimeのMEMS発振器は、ウェアラブル機器や携帯端末向けの新しい製品ポートフォリオにはうってつけだといえる。

 同氏は、「MEMSデバイスは小型、低電力で耐振動性に優れる。真空封止パッケージなので車載グレードへの対応も可能だ。スマートウオッチなどウェアラブル機器用のタイミングデバイスでは、MEMS発振器が最も適していると考えている」と語っている。

 メガチップスは、センサーハブIC「frizz」の開発を完了したところだ。次世代センサーハブとして発表されたfrizzは、ホストプロセッサからセンサーデータ処理タスクを分離し、プロセッサを使わずに超低電力のチップで処理する、というのが特長だ。

 メガチップスの設計者は、Tensilica(Cadence Design Systemsが買収)の32ビットDSPコア「Xtensa Lx4」をカスタマイズし、歩行者デッドレコニング(PDR:Pedestrian Dead Reckoning)に必要なマトリックス演算に理想的なアーキテクチャである、3-way VLIW(Very Long Instruction Word)と4-way SIMD(Single Instruction, Multiple Data)を搭載した。

photo 「frizz」のブロックダイアグラム 出典:メガチップス
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