計測器メーカーのNational Instruments(ナショナルインスツルメンツ)は、産業用IoTに狙いを定めている。もともと得意分野である状態監視システムだけでなく、機器に実装してスマート化を図る組み込みモジュールの展開にも力を入れる。どんな用途にも同じプラットフォームで対応できることが最大の強みだ。
エレクトロニクス業界の大きなトレンドになっているモノのインターネット(IoT)。それは計測器業界にとっても例外ではない。計測器メーカーのNational Instruments(ナショナルインスツルメンツ/以下、NI)でProduct MarketingのVice Presidentを務めるMike Santori氏は「現在は、まだ“バズワード”として捉えられることもあるが、われわれは常に、IoTとは何か、この新しい市場で何ができるのか、ということを問いかけている」と話す。
Santori氏は、「5年前、無線でインターネットに接続されるものは、まだまだ少なかった」と話す。「だが今は、洗濯機、冷蔵庫など、以前ならばインターネットにつながるとは考えられなかったものが、つながり始めている。そのため、このような新しいタイプの家電や機器をテストするプラットフォームが必要になる。こうしたプラットフォームは、どんな機器にインターネット接続機能が搭載されてもテストできるように、柔軟性を持っていなくてはならない。IoT機器の開発を手掛ける顧客と話をすると、柔軟性のあるテストプラットフォームへのニーズが高いことが分かる」(同氏)。
柔軟に構築できるテストプラットフォームは、まさにNIの中核となる製品だ。システム開発ソフトウェア「LabVIEW」でプログラム可能な制御/計測用ハードウェア「PXI」「CompactRIO」などを提供している。
NIはIoTを「民生用IoT」と「産業用IoT」に分けて考えている。NIが計測器メーカーとして、より注目しているのは産業用IoTの方だ。「大まかに分けると、民生用IoTはスマートウオッチやスマートメガネなど小さなもの、産業用IoTはクルマや装置、工場など大きなものがつながるイメージである。“IoT”と聞いて想像するものとは少し異なるかもしれないが、ネットで全てがつながるという根本の仕組みは同じだ」(Santori氏)。
NIは、この産業用IoTの方に大きなビジネスチャンスがあると見込んでいる。市場規模では民生用IoTが圧倒的に大きい。何兆個という規模でモノがつながるところだからだ。だがSantori氏は、「産業用IoTの市場規模も十分に大きく、当社にとって成長機会になると確信している。なぜなら、生成されるデータの量が最も多いのが、(温度や圧力、振動、加速度といった)エンジニアリングデータや科学的なデータだからだ」と強調する。大量のデータ、いわゆるビッグデータには、SNSなど由来のソーシャルデータや、企業由来のエンタープライズデータなどがあるが、NIは、これらのデータと区別するため、エンジニアリングデータを「Big Analog Data」と呼んでいる。
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