NIは、産業用IoTに向けたアプローチの方向として、「モニタリング(状態監視)向けプラットフォームの提供」と「組み込みモジュールによるスマート化の支援」の2つを取っている。
産業機器における大きな課題の1つはメンテナンスだ。機械やシステムの故障を防止するため、状態監視が必要になることも多い。米国の大手電力会社であるDuke Energyは、NIのプラットフォームを利用してインフラ設備のモニタリングを行っている。モニタリングの対象は、タービンやポンプなど1万台に上る装置だ。3万個のセンサーを使って、24時間7日間、休むことなくデータを収集している。
具体的には、CompactRIOと、データ収集/解析向けソフトウェア「InsightCM Enterprise(以下、InsightCM)」を用いている。InsightCMは2014年夏に発表された製品だが、これがリリースされる前は、ソフトウェア開発システム「LabVIEW」などを使って顧客自身で解析ソフトウェアを構築していた。「だがその場合、クラウドに全てのデータをアップする作業が難しかった。そのため、データはローカルにとどまり、うまく共有できていなかった」(Santori氏)。
NIは、約15年にわたりモニタリング向けのアプリケーションを提供しているが、IoT向けに組み込みモジュールを提供するのは、比較的新しい取り組みだ。その一例が、Airbus(エアバス)が進めるスマートファクトリープロジェクト「Factory of the future」である。
1機の飛行機を組み立てるには、何万もの工程が必要になる。締め付けが必要な個所は約40万にも達し、締め付けに必要な工具は基本的なものだけでも1100種類にもおよぶ。Factory of the futureでは、SOM(System on Module)「sbRIO-9651」を用いて、各工程で正しい作業ができるように導く“スマートツール”の開発を進めている。開けている穴の深さをモニタリングして、穴を開ける作業を制御する“スマート電動ドリル”、ネジのトルクやネジ締めのスピードなどを場所に応じて自動で設定する“スマート電動ドライバ”などだ。
2014年8月に行われたNIの開発者向けカンファレンス「NI Week 2014」の基調講演では、作業の様子を確認できるメガネ型端末のプロトタイプが紹介された。内蔵のカメラで手元の作業を認識し、ツールに適切な処理を与える機能を想定している。ネジを締めている場合は、その作業をカメラで画像認識し、「トルクが強い/弱い」といったフィードバックを電動ドライバに送る、といった具合だ。
「1100種類にもおよぶツールだが、追加したい機能は基本的に全て同じで、“データを集めて決められた場所に送信する”ということだ。Single-Board RIOをツールに実装し、LabVIEWでプログラミングするだけで、さまざまなツールをスマート化できる。これがプラットフォームを利用することのメリットだ」(Santori氏)。同氏は、「Airbusのプロジェクトは、飛行機のように複雑な機械やシステムの組み立て工程がIoTによって向上するというよい事例だと思う」と続けた。
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