スマートフォンは今後、ユーザーの行動パターンや好みなどを把握し、より“ユーザー仕様”になっていくだろう。「ユーザーとモバイル機器」という関係よりも、もはや友達や相棒のような存在になる可能性もある。
「スマートフォン(smart phone)」という言葉が活字として初めて現れたのは1995年のこと(AT&Tの「PhoneWriter Communicator」をそう表現した)だが、それから12年後、ユーザーのボキャブラリーの中にその言葉を定着させたのは不屈の人、スティーブ・ジョブズ氏だった。以降、スマートフォンという言葉は確実に定着しており、それに取って代わるような表現は今のところ現れていない。
将来のスマートフォンの性能や利便性は、ジョブズ氏や世界の人々の想像を超えるものになるだろう。
一方で、洗練さに欠けるマーケティングによって、ユーザーに不快感を与える可能性もあることを心に留めておく必要がある。スマートフォンは、より“知的”になっていくだろうが、決して“思考するマシン”になるわけではないということだ。スマートフォンは単に、複数のセンサーを搭載し、適応能力かつ順応性を備えた、非常によく仕込まれた機器にすぎないのだ。
スマートフォンメーカーや、スマートフォン向けの部品を提供するサプライヤの目標は、ユーザーが“機器を使っている”ということを意識しないようになるレベルまで持っていくことだ。「技術は、意識されなくなって初めて役に立つ」というのが筆者の持論である。
ユーザーが各自の好きな方法で自分のスマートフォンを設定・操作できるようになれば、ユーザーとスマートフォンの関係は人間同士のようなものになるだろう。
スマートフォンメーカーやサプライヤはこの点を理解しており、状況を改善するために対策を講じている。驚くべき速さで取り組んでいるので、今後18カ月の進展は目を見張るものになるだろう。
そうした進展の主な要素となるのは、セキュリティの向上である。
スマートフォンのメモリ容量は、2016年には現在の2倍になるとみられている。今後、メモリの高速化と低消費電力化が進んでいくだろう。これは、ユーザーの個人情報をローカルで保存できるようセキュリティの向上を実現する上で、不可欠な要素の1つだといえる。業界では、クラウド上の処理能力を向上させる必要性ばかりが強調され、機器上の処理能力向上の必要性が見過ごされている。スマートフォンは今後、より多くのことをローカルで実行し、より多くの情報をローカルで保存するようになるのだ。
ローカルデータへのアクセス手法としては、目や顔、声、指紋、心拍などを利用する、生物学的にユニークな、多元的な生体認証が採用されるようになる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.