古澤氏らの研究グループは2013年に、量子(光子)の波動性に着目して完全な量子テレポーテーション*)の実験に成功しており、従来に比べて100倍以上の効率で量子テレポーテーションを行う方法を見いだしていた。
*)関連記事:完全な量子テレポーテーションに成功
ただ、2013年当時の実験装置は、光学テーブルの床面積が4.2×1.5mと大きく、この装置には500点以上のミラーやレンズなどの光学部品を使って回路を構成するなど、実用化には程遠かった。
今回の開発成果は、これまでの研究成果に基づき、超高速コンピュータの実用化に近づく成果といえる。多数用いられている光学部品のうち、1/4〜1/5程度を占めるとみられる量子もつれ生成・検出の部分(実装スペースは約1m2)を、外形寸法が26×4mmの極めて小さな光チップに集積し、その動作を確認した。チップ上に導波路を形成することで、フリースペースで必要となっていたミラーやレンズなどの光学部品を削減することが可能となったからである。「今回の成果は、超高速コンピュータや超大容量光通信システムを実用化していくための突破口になる」(古澤氏)とみている。
試作した光チップは、シリコン基板上にシリカを成膜し、リソグラフィ技術でパターンを形成する。そこに不純物を添加して屈折率を向上させ、その上にガラスを成膜して製造する。シリカの導波路は幅3μm、高さ3μmと微細である。光チップ内に作り込んだ導波路で2波を合波して量子もつれを生成する。ホモダイン測定に相当するビームスプリッタも作り込んだ。ヒーターでローカルに温度を制御することで、ビームスプリッタの分岐比を変更することができるという。
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