今回のニアミスは、ヒューマンエラーが起こり得ないはずの自動運転車2台の間で生じたという点で、極めて切実な問題だといえる。
いずれの自動運転車も、搭乗者と車体そのものが無傷だったことから、本当の事故ではなかったと言えなくもない。
しかし、今回報じられていないが、Delphiの自動運転車には、V2V(Vehicle to Vehicle/車車間)通信技術が搭載されているのだ。Googleの自動運転車には同技術は搭載されていない。
Googleはこれまで、自動運転車がライダーやレーダーの他、さまざまな種類のセンサーを搭載していることをアピールしてきたが、V2V通信技術については全く触れてこなかった。同社は、Google CarにV2V通信技術が必要かどうかを検討したことがないのだ。
しかし、14回もの軽度の接触事故が起こったということから、Googleの自動運転車にも独自のDSRC(Dedicated Short Range Communications/専用狭域通信)技術を搭載することによるメリットがあると証明されたのではないだろうか。少なくとも、V2X(Vehicle to Everything)の提唱者たちが待ち望んだ状況にはなったといえるだろう。
V2V技術は、DSRC規格を採用する。DSRCは、米国連邦通信委員会(FCC:Federal Communications Commission)やISO(国際標準化機構)などの機関によって策定された「IEEE 802.11p」としても知られている。
FCCは米国内において、DSRC通信向けとして5.9GHz帯(75MHz幅)を割り当てている。
例えば、DelphiのCadillac CTSのV2V技術は、DSRC技術を採用している。しかし、Google Carと衝突しそうになったAudi Q5がV2X技術を採用していたかどうかは定かでない。EE Timesがこの点について質問したところ、Delphiからの回答は得られなかった。
それでもDelphiは、V2X技術について確かな価値を見いだしたようだ。
Delphiの広報担当者は、EE Timesの取材に対し、「V2VとV2Xは、自動車が搭載する知覚システムの対応範囲を超えて周囲を見渡せることができるようサポートを提供し、積極的安全技術の範囲を拡大することが可能だ。例えば、事故の発生によって、道路のカーブ周辺で交通の流れが妨げられている状況を確認するといったことなどが挙げられる」と述べている。
ここで注視すべき重要な点は、V2V技術が、自動車の速度や現在位置、走行方向、オン/オフスロットル(加速、駆動、減速)、ブレーキ、アンチロックブレーキシステム(ABS)、“車線変更する/しない”といった情報を把握して、周囲の車両に伝送するということだ。
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