Koh氏は、「もし、Google CarがDSRC技術を採用していたとしたら、周辺の自動車に対して、車線変更するという意思を伝えることができたのではないだろうか」と述べる。
だとすれば、Delphiの自動運転車は、その情報を受信して動きを遅らせることにより、Google Carを先に車線に入らせることができた可能性がある。
Koh氏は、「自動車間のやりとりが可能であれば、早い段階で相互を認識することにより、タイムリーな意思決定を行うことができる。このため、急に回避行動を取るようなこともなく、ユーザーエクスペリエンスを向上させることが可能だ」と結論付けている。
確かに自動運転技術は、センサーを利用することで、見通せる範囲内のものに反応することができる。しかし、こうした技術を採用した自動運転車の場合、コネクテッドカーでもない限り、見通せる範囲外の交通状況を把握することができないのはもちろんのこと、他の自動車のドライバーの意図を予測することも不可能だ。
SiemensでIntelligent Transportation Systemsの研究開発担当主席システムエンジニアを務めるDave Miller氏は、パネリストとして参加し、「この写真(下に掲載)では、視界が完全に遮られている」と述べた。
Miller氏は、視界が遮られた写真を見せながら、「他の自動車の位置を把握できなかったことが原因で発生した交通事故での死亡者数(米国内)は、2014年だけで2万7120人だった」と指摘した。
Koh氏は、「自動運転技術は、交通の危険性を低減する上で受動的に状況に対応するが、コネクテッドカー技術は、先を見越して積極的に対応することが可能だ」とする見解を示している。
もちろん、携帯電話機が登場して間もない頃と同様に、他の全ての自動車にも同じように技術が搭載されていなければ、享受できるメリットも限られることになる。
Cisco Systemsでスマートコネクテッドカー担当ディレクタを務めるAndreas Mai氏は、参加したパネル討論において、V2V技術を搭載したコネクテッドカーの“ネットワーク効果”について問われると、「V2V技術が影響を及ぼすようになるには、今後まだ数年間を要するだろう。DSRC技術を搭載する新車の他にも、アフターマーケットのDSRCがあることを忘れてはならない」と強調した。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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