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ゲリラ豪雨を30秒以内で予測する気象レーダフェーズドアレイ方式を活用

情報通信研究機構(NICT)は、2015年10月22〜23日に開催した「NICT オープンハウス 2015」で、フェーズドアレイ気象レーダの展示を行った。同研究を進めるNICTのセンシングシステム研究室で主任研究員を務める佐藤晋介氏に、その概要や特長について話を聞いた。

» 2015年11月04日 10時30分 公開
[庄司智昭EE Times Japan]

 情報通信研究機構(以下、NICT)は、2015年10月22〜23日に開催した「NICT オープンハウス 2015」で、フェーズドアレイ気象レーダの展示を行った。ゲリラ豪雨や竜巻の詳細な3次元構造をわずか10〜30秒で観測することができるという。

 同研究はNICTと東芝、大阪大学が共同で実施している。NICTのセンシングシステム研究室で主任研究員を務める佐藤晋介氏に、その概要や特長について話を聞いた。

パラボラアンテナでは5〜10分

 近年、2014年8月に広島で発生した土砂災害のように、日本でもゲリラ豪雨の被害が深刻となっている。現行では台風や低気圧、梅雨前線などの降雨を観測するために、パラボラアンテナを用いた気象レーダ「XバンドMPレーダ」が各地に整備されている。XバンドMPレーダは、アンテナを小さくできるXバンドを用いたドップラーおよび二重偏波観測が可能なマルチパラメータ(MP)レーダ。MPレーダは、パラボラアンテナの仰角を約10回変えながら360度回転させる必要があるため、観測に5分以上の時間を要してしまう。しかし、局地的な大雨をもたらす積乱雲は10分程度で急発達するため、「より短時間で詳細な3次元構造を観測できるレーダが期待されていた」(佐藤氏)という。

 フェーズドアレイ気象レーダは、128本のスロットアレイアンテナによるデジタルビームフォーミング(DBF)を採用。DBFとは、アレイアンテナそれぞれのアンテナ素子の信号をデジタル処理することで、複数のアンテナビームを形成する技術である。1次元アレイとDBFにより、アンテナを1回転させるだけで、MPレーダと同じ精度の観測を10〜30秒ですることが可能という。半径60km、高度14kmまで観測できるとしている。

MPレーダとフェーズドアレイ気象レーダの比較 (クリックで拡大) 出典:NICT

スマホ向け無料アプリを提供

 同研究は、2012年8月にフェーズドアレイ気象レーダの開発に成功。大阪大学やつくば気象研究所など、現在日本で4台のフェーズドアレイ気象レーダで試験観測が開始。2015年7月には、30秒ごとの3次元降雨分布をアニメーションで表示してくれるスマートフォン向け無料アプリ「3D雨雲ウォッチ」をエムティーアイと共同で提供している*)

*)対象地域は大阪府吹田市を中心とする80×80km領域。対象端末はAndroid 4.4、iOS 8以上を推奨している。

 今後は、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックまでに、より正確に観測が可能になる二重偏波のフェーズドアレイ気象レーダを開発するとしている。

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フェーズドアレイ気象レーダによる観測結果 出典:NICT

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