2つ目の技術革新(Gen 2)は、新型パッケージの開発である。2012年に市場投入した製品にはeWLB(embedded Wafer Level Ball Grid Array)と呼ばれる新たなパッケージ技術を採用した。それまでは、77GHzのミリ波レーダーチップに対応できるパッケージ技術は開発されていなかった。このため、放熱対策なども考慮して、クリーンルーム内でプリント基板上にベアチップを直接実装していたという。
Bornefeld氏によれば、「eWLB技術を用いると、プリント基板とチップの接続距離を短くすることができ、配線ロスを極めて小さく抑えることが可能となった。放熱対策も比較的容易である」。モジュールコストはGen 1製品に比べて、さらに約30%の削減が可能だという。この結果、Gen 2のミリ波レーダーシステムは、「VWのゴルフやDaimlerのSMARTなどサブコンパクトカーまで搭載されるようになった」(Bornefeld氏)。
システムレベルのコスト削減を可能としたことで、チップの出荷数量も急増している。「2009年にGen 1製品を発売し、2015年7月までに累計出荷数量が1000万個に達した。今後1年間で出荷数量をさらに1000万個上乗せできるだろう」とBornefeld氏は述べた。
Bornefeld氏は、RASICの開発ロードマップも示した。現在開発を進めているのがGen 3と呼ぶ製品だ。次世代の77GHzミリ波レーダーチップに加えて、MCUや電源ICを含めて、完全なチップセットソリューションを提供する。Gen 3製品は2019年の市場投入を予定している。次世代ミリ波レーダーチップは、SiGe技術をベースとしながらも、遮断周波数(fT)をGen 2製品の250GHzから、Gen 3製品では400GHzとする計画だ。Bornefeld氏は「fTが高くなることで駆動用のパワーを小さくできる。熱の発生を抑えることができるのでモジュールベンダーのメリットも大きい」と話す。
次々世代となるGen 4の技術開発にも触れた。CMOS技術を用い、レーダーシステムの主要回路ブロックをワンチップで実現していく。また、より高いRF周波数への対応や、演算性能を高めたコントローラの開発などを挙げた。業界では、使用する周波数帯域を現在の77GHzから、将来は100GHz以上に引き上げていく議論も始まっているという。
さらに、「Gen 2製品からGen 3製品、Gen 3製品からGen 4製品へと技術が進化していく中で、世代が進むごとにシステムレベルのコストを30%削減できる製品開発を目指している」と語るなど、部品コストの低減に対する取り組みについても言及した。同社によれば、車載用ミリ波レーダーシステムは、すでに単眼カメラシステムより安価になっているという。
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