新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2015年11月26日、2015年10月に決定した古川一夫氏の理事長再任に伴い、今後の方針について記者発表会を行った。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2015年11月26日、2015年10月に決定した古川一夫氏の理事長再任に伴い、今後の方針について記者発表会を行った。「投資効果の早期実現と最大化」を目標に掲げて、新たな任期に臨みたいとしている。
古川氏は、就任時の2011年を「東日本大震災のあった年で、社会全体がエネルギー問題に関心を持つ中、強い思いを持って初日を迎えたことを忘れられない。それから4年間、産学官を含めたさまざまな方に協力していただき、ここまでこれた」と振り返る。
前任期での4年間を通しては、太陽光発電を中心とした再生エネルギーの普及、水素燃料電池技術開発、ロボット技術開発に力を入れてきたとしている。また、名古屋大学の天野浩教授が2014年のノーベル物理学賞を受賞したことに関しては、「天野氏には、NEDOプロジェクトで、効率的な窒化ガリウム(GaN)結晶成長方法の開発に大きく貢献していただいた。同成果は、高効率LED照明の実現だけでなく、パワーエレクトロニクスの次の鍵となる技術である」(古川氏)と語った。
古川氏が、新たな任期の目標として掲げるのは、「投資効果の早期実現と最大化」だ。NEDOプロジェクトの成果が使用されている109製品の、売り上げ実績と将来の売り上げ予測額を試算した結果、2013年度から2022年度までの売り上げ累計額は約69兆円に上るという。NEDOにとって、投資効果に対する責任は大きいといえる。
また、NEDOが支援する研究は、短期的なスパンで結果が求められる民間企業と違い、3〜7年、対象によっては30年とスパンが非常に長い。そのため就任当時に受けたカルチャーショックとして、「NEDOの投資効果に対する認識が弱いこと」があったとしている。2015年4月に「国立研究開発法人」となってから自由度は増したが、古川氏は「いつリターンが返ってくるのか」と口酸っぱく尋ねるようにしているという。
今後注力していく分野としては、“IoT(モノのインターネット)と人工知能(AI)”を挙げた。古川氏は、「IoTのセンサーシステムの中核には、制御システムとして人工知能が活用されていくだろう」と語る。2016年には、経済産業省や産業技術総合研究所、多くの専門家とともに、「IoTと人工知能に関する新しいプロジェクトを幅広い形で立ち上げる予定」(古川氏)とした。
NEDOは今後力を入れていく分野として、ベンチャー企業支援も挙げている。イノベーションにつながるシーズを持つ研究者や起業家を支援する「スタートアップイノベーター」や、NEDOとベンチャーキャピタルが共同で研究開発型ベンチャーの支援を行う「研究開発型ベンチャー支援事業」を始めている。
古川氏は、「NEDOは今まで15年にわたって1500億円ほどベンチャー企業の支援を行ってきており、その中で15社が上場したことはとても喜ばしい。支援してきた企業の時価総額も約7000億円になったが、売り上げ自体はまだ約1000億円である。今後も、技術の可能性と経営者のやる気とセンスを見て、ベンチャー支援に注力したい」と語った。
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